二人制審判の勉強



(25)ボールの速さと二人制審判のダブルプレー

臼井審判員 

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 最近、軟式と準硬式の二人制審判をやっておりまして気がついたことです。


ボール
左から準硬式ボール 硬式ボール 軟式ボール

 軟式と準硬式のダブルプレーの数が、圧倒的に準硬式が多いと言うことです。軟式の場合はハイレベルの試合でも1つか2つです。ほとんどない時もあります。準硬式の場合は少ない時でも1つはあります。多い時は5つもあります。

 単純に打球の速さが違うからと思っておりました。事実、準硬式では正面の内野ゴロは70パーセントの確率でダブルプレーになります。また野手が取ってすぐに送球しなくてもダブルプレーになる時があります。

 ところが軟式の場合は正面の内野ゴロでも、かなり早く取って送球しないとダブルプレーになりません。

 この違いは打球の速さだけではないと思います。そこでボールの重さを調べてみました。準硬式ボールと軟式ボールの重さは約3グラム違います。(公認野球規則1・09参照)。

号     直径     重量       反発
A号軟式 71.5--72.5mm  134.2--137.8g  80.0--105.0cm
H号準硬 71.5--72.5mm  141.2--144.8g  50.0--70.0cm

 参考までに硬式ボールの重さは141.7グラム〜148.8グラムです。

 準硬式ボールと軟式ボールの重さは3グラム違います。卓球ボールは重さが2.7グラムです。まあピンポン玉1個強の違いだと思ってください。

 この3グラムの違いが送球する時のスピードとなって表れるのだと思います。

 簡単なテストを選手にやっていただきました。準硬式ボールと軟式ボールを遠投いたしますと約5メートルの違いがありました。また外野からのホームへの送球では準硬式ボールはダイレクトで届きましたが、軟式ボールはワンバウンドしました。試合の合間のテストですので正確なデーターではありません。

 子供の頃、河原や海辺で石の飛ばしっこをやったと思います。必ずしもガキ大将が遠くまで飛びませんでした。やはり石の形・重さが微妙に違って思わぬ子が遠くへ飛ばしていました。

 軟式ボールは空洞がありますが、準硬式ボールは空洞がなく石みたいに硬いです。この違いも打球・送球に大きく影響してきます。

 また満塁の場合で野手正面の2−.3のダブルプレーは、準硬式の場合は打者・走者が塁間の三分の二ぐらい走ったところでダブルプレーが成立します。それに比べ軟式の場合は結構ギリギリのアウトが多いいです。

 もう一つ、走者二塁で外野のヒットでホームアウトが準硬式の場合は多いです。外野の守備位置も軟式より深く守っています。

 軟式ですと「間に合わない」と感じるのが、準硬式では内野手がカットして送球してもアウトになります。この変の違いもボールの重さがスピードに加担しているのに関係があるのではないかと思います。

 私の知っている選手で準硬式・軟式と両方の試合をする方がいます。何故か軟式の時は打てない、守れないのです。

 また、軟式だけの経験者は準硬式をやらせますと打てません。守れません。野球は硬式だから、軟式だからと一口には語ることは難しいです。だから反面、面白いのではないかと思います。

 また、ボールの反発力にも関係があります。軟式は大きく跳ねますが、準硬式は跳ねません。ボールの跳ねた滞空時間が違うためも送球も違ってきます。さらに手に持ったボールの固さも軟式ボールは握った瞬間やわらかいです。これも送球に影響してきます。

 軟式・硬式・準硬式を経験して選手の話です
 「硬式より打球が早いです。とくに初速スピードが速いです。打球の距離は硬式が出ます。準硬は面白いですよ」なるほど準硬にこだわる理由が少しわかりました。

 肝心の「二人制審判のダブルプレー」は塁審の見せ場です。1試合に5つも取りますと「今日はいい日」だと大満足します。意外と審判員は単純な頭脳の持ち主が多いのです。

 気をつけなければいけないこと準硬式の初速の打球が速く、硬式・軟式よりも審判員に当たる可能性があるということです。先日も打球が顔面に飛んできました。かろうじてかわしましたが、ワーキングエリアに入ったら緊張してやらないと大きな怪我につながります。

 「二人制審判のダブルプレー」もやはり見る角度です。私は位置や形にあまりこだわりません。一番大切なことは5万人の観衆が観ていると思ってジャッジすることです。

 打球の速さ、打球の方向、さらに球筋。そして私がいるワーキングエリアを考慮してジャッジするように心がけています。

 格好よくやろうなどと考えますと、結局はミスジャッジにつながります。ジャッジは何も考えないで見たままの自然体が一番いいのではないかと最近思うようになってきました。

(2011年11月15日)



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