二人制審判の勉強



複数審判制におけるフォーメーションの形成とコミュニケーション(5)

甲斐 雄之 

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○ 打球の判定とフォーメーションの形成について述べます。

 ★走者無しの場合 一塁及び三塁に位置する塁審が打球を追わない場合。
打球が明らかな安打の場合は打球処理の状況から目を切らないで、走者への対応を行います。打球がイージーな外野飛球(ルーティンフライボール)の場合で、一塁の塁審に打球の判定責任があり、判定を行う場合は、原則は一塁側ファウルラインの外側で行いますが、別手法としてピボットエリアへ入り行うことも出来ます。(注)一塁及び3塁ライン際の打球はトラブルボール(打球わ追う場合)として行います。

野手が落球した場合及び安打となった場合はピボットエリアで走者へのリターンプレーに備え、走者が二塁へ進塁すれば、走者より先に二塁カットエリア(ベースから13フィート)付近へ移動します。三塁の塁審は二塁・三塁間の塁線の内側を素早く二塁カットエリア付近へ移動して二塁のプレーに備え、プレーが長打の場合、一塁の塁審が二塁へ来れば、引き継ぎ、三塁へ戻り三塁のプレーに備えます。

球審はマウンドと本塁の中間へステップしてオブザーブします。同じケースで三塁の塁審に打球の判定責任がある場合は二塁・三塁間の塁線の内側を二塁方向へステップして判定を行い、野手が落球した場合の行動は前記行動と同じであります。


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 ★走者無の場合 一塁に位置する塁審が打球を追う場合。
打球はトラブルボール。二人制フォーメーションに切り替えます。球審は一塁手前ファウルラインの内側カットエリア(ベースから13フィート)付近まで進み、打球が安打、抜けるか野手が落球した場合は一塁のプレーを担当します。

走者が二塁へ達したら本塁へ戻りプレーに備えます。三塁の塁審は二塁・三塁間の塁線の内側をステップしてワーキングエリアへ移動して、二塁と三塁の全てのプレーを担当します。

 ★三塁に位置する塁審が打球を追う場合。

打球はトラブルボール。二人制フォーメーションに切り替えます。一塁の塁審はピボットエリアへ入り、打球が安打、抜けるか野手が落球した場合、打者走者の一塁触塁を見てピボットしてワーキングエリアへ入り、走者に先行して二塁及び三塁の全てのプレーを担当します。球審はマウンドと本塁の中間へ出てオブザーブし、プレーの展開を見て本塁のプレーに備えます。

 ★走者一塁の場合・一塁に位置する塁審が打球を追わない場合。
フォーメーションの形成はローテーション(別名Clock Ways 時計廻りと呼びます)方式をとります。一塁の塁審は外野への打球から目を切らず、ファウルラインの外側で打球を見通し、打球が飛球で走者がタッグアップをする場合はこれを見て。打球が安打、抜けるか野手が落球した場合は打者走者の一塁触塁を見て、プレーから目を切らずに本塁へ移動し(コミュニケーションを励行する)、本塁のプレーに備えます。

二塁の塁審はワーキングエリアへ入り一塁からの走者の触塁を見て、一塁側へステップして打者走者の一塁触塁を見て二塁及び一塁のプレーを担当します。球審は打球の判定責任がある場合はこれを行い、プレーの展開を視野に入れ三塁へ移動して三塁のプレーを担当します(コミュニケーションを励行する)。

 ★一塁に位置する塁審が打球を追う場合。
打球はトラブルボール。二人制フォーメーションに切り替えます。打球が飛球の場合、二塁の塁審はワーキングエリアへ入り一塁側へステップして、一塁走者のタッグアップをみる(レフト側の打球は素早く肩越しにグランスィングで見る)。打球が安打、抜けるか野手が落球した場合、ワーキングエリアでプレーに対応できるポジションを維持して、二塁と一塁の全てのプレーを担当し、打者走者が三塁へ進塁すれば、走者に先行してカットエリアまで移動してプレーに対応します。

球審はプレーの展開を目線に入れ三塁へ移動して、一塁からの走者のプレーを担当し、走者が本塁へ進塁すれば、本塁へ戻り、本塁のプレーに備えます。

 ★走者一塁・三塁の場合。 一塁に位置する塁審が打球を追わない場合。
フォーメーションの形成にはローテーション方式とスライド方式(ローテーション方式とは逆の一塁の塁審が二塁へ、二塁の塁審が三塁へポジションを移動します)の二つの方法があります。

ローテーション方式が原則手法でスライド方式は別手法と言えます。スライド方式を取る場合については、クルーの対応認識が一致していること及びコミュニケーション(ボイス又はシグナル)が欠かせない要件となります。

△ローテーション方式 一塁の塁審と二塁の塁審は走者一塁の場合と同じ行動です。球審は走者一塁の場合に三塁走者のタッグアップと本塁の触塁への対応が加わります。△ スライド方式 ローテーション方式の原則に対し、限定した条件のもとに使われます。従ってクルーの条件認識の一致とコミュニケーションが大切であることは先に述べました。

例により説明します。例1、左・中間へ高く上がった飛球で、走者のタッグアップを想定するケースです。二塁の塁審は打球の判定(キャッチ/ノーキャッチ)を行い、キャッチの場合、ワーキングエリアへ入り、タッグアップした一塁走者の二塁のプレーと及び三塁のリータンプレーに備え、一塁の塁審は一塁走者のタッグアップを見ます。

この場合、原則は一塁側ファウルラインの外側で見ますが、打球の状態を見て、ピボットエリアへ入り、素早く肩越しにグランスィングで見る手法もあります。

球審は三塁走者のタッグアップを見通し、本塁のプレーに備えます。打球が抜けるか野手が落球した場合は二塁の塁審は一塁からの走者の二塁触塁を見て更に三塁へ進塁すれば、走者に先行して三塁カットエリアへ移動して、プレーに対応します。

一塁の塁審は走者に先行して二塁ワーキングエリアへ移動し、二塁と一塁のプレーを担当します。球審は三塁走者のタッグアップに備えた位置から本塁へ戻り、本塁のプレーに備えます。例2、二死の場合にタイムプレーを意識して、打球が安打、抜けるか野手が落球した場合にスライド方式を取ると決めて行動する場合。行動認識を一致させるためにコミュニケーション(ボイス又はシグナル)が大切であります。


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 ★一塁に位置する塁審が打球を追う場合。
打球はトラブルボール。二人制フォーメーションに切り替えます。二塁の塁審の行動は、前記走者一塁で、一塁の塁審が打球を追う場合と同じであります。

球審は三塁走者のタッグアップを見通して本塁へ戻り、プレーに対応します。打球が安打、抜けるか野手が落球した場合は、三塁走者の本塁触塁を見て、三塁へ移動して一塁からの走者へのプレーを担当し、走者が本塁へ進塁すれば本塁へ戻り、本塁のプレーを担当します。三塁・本塁間の移動はコミュニケーションが大切です。

 ★走者一塁・二塁の場合・一塁に位置する塁審が打球を追わない場合。
一塁の塁審は飛球で走者がタッグアップすれば、ファウルラインの外側(原則)でこれを見る。別手法としてトラブルボールで、抜けるか野手の落球が予想される場合はピボットエリアへ入ってこれを見ます。

打球が安打、抜けるか野手が落球した場合、ピボットエリアで打者走者の一塁触塁を見たらピボットして走者に先行して二塁へ移動して、ワーキングエリアでプレーの展開に対応したステップで二塁と一塁のプレーを担当します。

二塁の塁審は打球の判定責任がある場合はこれを行い、ワーキングエリアで二塁走者のタッグアップを見て二塁のプレーに備えます。打球が安打、抜けるか野手が落球した場合、一塁からの走者の触塁を見て、三塁は球審が行くので二塁・三塁のプレーに備え、走者が三塁へ進塁すれば、走者より先に三塁へ移動して三塁のプレーに対応します。球審は打球の判定責任がある場合はこれを行い、二塁走者がタッグアップすれば三塁へ移動してプレーに対応します。

この場合、二塁の塁審は二塁と一塁のプレーを担当し、一塁の塁審は展開を見て本塁へ移動して、本塁のプレーに備えます。このケースの他、球審は本塁にステイして本塁のプレーを担当します。このプレーはコミュケーションが大切であります。

 ★一塁に位置する塁審が打球を追う場合。
打球はトラブルボール。二人制フォーメーションに切り替えます。二塁の塁審は二塁・一塁間ワーキングエリアで飛球であれば二塁走者と一塁走者のタッグアップに備え、レフト側の打球であれば一塁走者のタッグアップは二塁から一塁へ目線を素早く肩越しにグランスィングで見ます。

打球が安打、抜けるか野手が落球した場合、ワーキングエリアでプレーに対応できるポジションを維持して一塁から三塁の全てのプレーを担当します。打者走者が三塁へ進塁する時はこれに先行して三塁カットエリア付近へ進み、でプレーに対応します。

球審は二塁走者がタッグアップをする場合は三塁へ移動してプレーへ対応します。この他打者走者を除く二塁及び一塁走者の三塁触塁を本塁の三塁側ファウルラインへ出て見て、本塁のプレーに備えます。走者一塁・二塁で二死であればタイムプレーがあることを意識する為のコミュニケーションも大切です。

(つづく)


(2012年4月15日)



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