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野球害毒論と野球統制令 ★≪野球害毒論について≫ 当時は異常とも云える野球ブームで、特に早慶戦に至っては試合とともに応援合戦も活発化し、1906年には応援団の過熱化が原因で、予定されていた第3戦が中止になるという事態を招く一方で、選手の中には野球を続けるために留年を繰り返すものまで出るようになりました。 この野球害毒論の発端は、当時の野球の過熱ブームに対する非難の声であったともいわれています。 ■害 毒 論 者 の 声 ★≪新渡戸稲造・第一高校校長≫ ★≪川田府立第一中学校校長≫ 「野球の弊害四ケ条」 ★≪永井東京高師教授≫ ★≪松見順天中学校長≫ ★≪磯辺検三・日本医学校幹事≫ ★≪東大医科整形外科医局長・金子魁一≫ ★≪日本体育会長加納子爵≫ ★≪水戸中学長・菊池謙二郎≫ ★≪野 球 統 制 令 に つ い て≫ 6月中旬以降甲子園を目指して、各地で地方予選が始まっていたが、文部省は軍部の要請でスポーツ各団体の代表を集め、府県外での試合の中止指令を出しました。 昭和18年1月22日付の朝日新聞には、王国愛知で“排撃決意”、“野球を叩き出す”の大きな文字が躍っています。 野球統制令とは、野球の統制並びに施行に関する件の略称であるが、学生野球の統制と健全化を目的として1932年(昭和7年)に、文部省から発令された訓令で、最終的には1947年(昭和22年)に、太平洋戦争終結とともにこの統制令は廃止されました。 訓令が発令されることになった原因は、大正期から昭和期にかけての野球人気が高まる一方で、小学生から大学生まで学生野球に統一的なルールがなかったため、学生野球の商業化、興業化などの問題が指摘されていたためです。 小学校レベルでは、大正期の軟式ボールの開発によって、軟式野球が全国的に普及し軟式の野球大会が全国的に行われるようになったが、これらの大会の主催者の多くが、軟式ボールを製造販売するゴムの会社で、自社製品の宣伝と販売を目的として大会が多く行われました。 中学校レベルでは、朝日新聞社主催の全国中等学校優勝野球大会が、大正4年(1915年)に開始され、毎日新聞社主催の選抜中等学校野球大会が大正13年(1924年)に始まりました。 大学レベルでは、東京六大学野球連盟が1年間に40万円超の入場料収入を得ていたとされたが、会計の処理は不明朗なものが多く、中学校選手の引き抜きや選手の学業低迷などの報道もあり問題化しました。 大正期に学校を中心とした野球の普及と人気の拡大があり、その結果として、大会の乱立などにより、様々な形での金銭の授受が行われるようになって行きました。 このような状況は、学生野球の興業化、商業化、マネキン化などとして、常に批判的に捉えられていたが、当時の学生野球にはそれらの問題を防止するための全国的な統一団体や統一規則は、存在していませんでした。 1931年6月(昭和6年)、文部大臣の諮問機関である体育運動審議会は「体育運動競技の健全なる施行方法に関する件」の答申を発表し、1932年2月24日に小学校、2月27日に中学校、3月2日に大学・高等専門学校の試合規定を作成。これらの規定が3月28日に文部省訓令第4号として発令されました。 訓令の内容は、小学校、中等学校・大学及び高等学校の野球に関する事項として、それぞれに大会の開催、試合日の指定、県外校との対外試合の制限、入場料の収支・決算の文部省への報告義務・留年した選手の出場禁止、決算の報告義務などで、褒章等に関しては次のように定められました。(主なもの) ■文部省の承認のない外国への遠征と、来日外国チームとの試合の禁止 訓令によって、中等学校の全国大会の開催や大学野球連盟の設置に文部省の承認が必要になったが、1943年(昭和18年)3月、太平洋戦争の悪化に伴って「戦時下学徒体育訓練実施要綱」が文部省によって制定され、中学校のスポーツの全国大会及び大学のスポーツのリーグ戦などの開催も禁止されることになりました。 これを受けて同年4月6日、文部省体育振興課から、東京大学野球連盟に対して「連盟解散通知書」が手渡され同月28日、文部省の通知書に従って東京六大学野球連盟は解散することになりました。 戦局の悪化に伴う文部省の学校体育スポーツ政策の転換があったことは確かですが、文部省の学生野球弾圧を法的に可能としたのが本訓令だったのです。 戦時中の学生野球弾圧がこの訓令であったため、1946年(昭和21年)2月から文部省体育課長と東京六大学野球部長やOBを中心として、訓令の廃止と学生野球統制団体の設立に向けた話し合いが行われることになり、1946年8月学生野球指導委員会が結成され、「学生野球基準要綱」が制定されました。 これに伴って本訓令は、翌1947年5月21日発令の、昭和22年文部省訓令第6号によって廃止されることになりました。 |
(2010年3月1日) |