#47 K.O審判員
5.無走者で一塁塁審がゴーズ・アウトした時の二塁塁審の位置取り
打球が右翼手正面から右翼線上に飛んだ打球のFair/Foul、Catch/No Catchは一塁塁審がゴーズ・アウトして判定するのが基本的なメカニクスである。
その際、二塁塁審が自塁でのプレーに備えるために打球を見ず、一目散に内野内へ走りこむ光景が多く見られる。
これは決して間違った動きをしているわけではないが、ボールの行方と野手がボールを確保した位置を確認しておいた方が良い。
なぜなら、ボールの位置を確認しておくことに依り、判定の際に的確な角度が取れコールに余裕が持てるから・・・。
バッターは打ちにいっている。さぁ、Pause, Read, Reactの始まりだ。I’m going
out!
White Sox VS Tigers at US Cellular Field, Chicago.
球審:Jerry Crawford 2塁塁審:CB Bucknor 2005年9月1日撮影
ここで紹介する最新のポジション取りは、
一塁と二塁を結んだ延長線上の二塁ベースから約3メートル位後ろに位置する。
打者走者を正面から見ることで一塁触塁有無の補助と走者の動向を確認し、なお且つ送球を直視出来、二塁でのプレーにアジャスト(Adjustment)して判定の際によい角度を取れる。
捕手と二塁を結んだ線上の、二塁ベース後方大よそ3メートルに位置する。
これは2009年度CCAのアンパイアー・メカニクスで「Advanced Mechanic」として紹介され、2010年度版ではオプションになっている。
すなわち、出来るだけ内野内に入るとされているが、二塁外側に位置しても良いというもので、二塁塁審はプレーを読み、位置取りを選択出来る。
※CCA=全米大学野球コミッショナー協会
いずれの位置からもプレーにアジャストして適正な角度をとることが要求される。また、ボールから眼を切らず、走者をチラリと確認し、俊敏に自塁へ向かうスキルが要求されるのは云うまでもないこと。
それがいわゆる「欽ちゃん走法でのWatch the ball, Glance at the runners!」である(「必殺リミング」の項で紹介済み)
1912年4月開場したメジャーで一番古い球場、フェンウエイ・パーク。
この席は鉄柱が邪魔になり一塁方向が観にくいが、古式のスコアーボード
やグリーン・モンスターが良く見える。二塁塁審の位置に注目。
球審:Wally Bell 1BU:Laz Diaz 2BU: Bill Welke 3BU: John Hirschbeck
Red Sox VS Tigers at Fenway Park, Boston. 2004年8月27日撮影
6.走者三塁での二塁塁審の位置取り
通常、走者三塁のとき二塁塁審は二塁キャンバス後方に位置するが、最近はきわめて遊撃手寄りの後方に位置するようになっている。
これは、三塁塁審がゴーズ・アウトしたとき、三塁でのバック・プレーに出来るだけ早く対応することに主眼が置かれているものだ。
試合前のクルー・ミーティングで打球判定の責任分担をしっかりと確認しておくことが肝要である。
三・遊間後方のインフィールド内に位置する二塁塁審のRon Kulpa。
このときの打球判定責任はセンターからレフト正面と推察できる。
三塁塁審Jerry Mealsが「Goes out」すれば、二塁塁審が三塁をカバーするメカニクス。
Wrigley Field, Chicago.写真:UDCより/UDCアメリカ野球審判視察団撮影
この場面は従来の位置よりかなりレフト寄りで、しかも三・遊間のすぐ後方に位置しているのが良くわかる。三塁塁審がゴーズ・アウトしたとき、二塁塁審が三塁でのバック・プレーへ備えることに重点を置いていることが窺える。
その一方、一塁塁審が打球判定に行ったとき(Goes Out)、一・二塁間で起こり得るすべてのプレーに対応するために二塁塁審は俊足を飛ばし内野内へローテーションしなければ間に合わない位置取りでもある。
写真のような位置取りではないにせよ、ロッテ浦和球場で開催された先の日本プロアマ審判講習会でも紹介されたポジション取りである。
さあ〜、意欲的に挑戦、研鑽して体得しよう。
この場面(走者一・二塁)では一人がゴーズ・アウトした場合、三人制メカニクスになる。
三塁塁審がゴーズ・アウトすればスライド・シチュエーションで一塁塁審はリミングし、
二塁塁審も三塁方向へスライドして行く。一方、一塁塁審がゴーズ・アウトした場合は二塁塁審が一塁と二 塁の判定責任を持つ。1BU:
Brian Runge 2BU: Mike Winters
Padres VS Rockies at Petco Park, San Diego. 2007年9月22日撮影
7.三塁ホースプレーの判定位置
現在行われている判定の位置取りは三塁方向へ二、三歩入ったフェアー地域と大体決まっているようだ。
しかし、捕球面をしっかりと確認するには本塁方向のファウル・テリトリーへ俊敏にステップ・アップする必要がある。
すなわち、走者一・二塁の場面で明らかにSACバントや内野ゴロの場合など、三塁のホースプレーを判定する最新のメカニクスは、三塁手の捕球が確認できる本塁方向のファウル地域へ移動するというものである。
出来れば五、六歩くらいステップ・アップしたいが、その位置まで移動するのは容易でないことは確かである。
しかも、プレーを判定するときには必ず止まる(Pause)ことが基本であるが、捕球面を確認できる位置までステップ・アップ・ターンし、しっかりと止まったときにはプレーが完了してしまっていることが多々ある。それだけに相当難易なメカニクスであることは間違いない。
昨年、セ・リーグの試合で三塁に位置した西本審判がそのメカニクスの一端を見せてくれた。「さすが西本審判員。さすがプロ」と思わずため息・・・。
参考事項:2009年度版や2010年度版CCAの三人制メカニクスの中で、走者一・二塁のとき、三塁塁審が内野内ショート寄りに位置するが基本であるが、バントが予想されるときには一塁塁審が内野内に位置しても良いと記載されている。これは審判のオプション(選択)であり、三塁でのホースプレーを重要視する表れである。この時には互いにシグナル等で意思疎通を図ることが重要である。
旧ヤンキー・スタジアムのセンター後方に設けられていたメモリアルパーク。
B・ルース、J・ディマジオ、L・ゲーリッグ、M・マントル等歴代名選手のレリーフが飾られていた。試合前にここを見学するのも楽しみの一つだった。
Before a game of Yankees VS Orioles at Yankee Stadium,
NY. 2007年9月17日撮影
8.三塁タグプレー時の三塁塁審の位置取り
通常は二・三歩フェアー・テリトリへステップ・アップし、タグとベースタッチが確認できる位置取りが最良とされている。
最新のメカニクスでは二・三塁線上のベースから2〜3メートルくらい離
れたファウル・テリトリーに位置する。
走者を正面に見据え、送球の高さの目線で構えタグを上から覗き込むように
するとタグとベースタッチが確実に見える位置である。また、落球したときなど瞬時に確認(Drop the ball)出来る位置でもある。
このときは必ず止まることが肝要で、それと同時にプレーを読む力(Pause、Read and React)が試されるときである。
9.球審の本塁での位置取り
一点を争う試合で、本塁で起こるクロス・プレーの判定には何時にもま
して正確度が要求され緊張の一瞬である。
アウト・・・?セーフ・・・?
観ている者すべてがその判定に一喜一憂する瞬間でもある。
その際、球審の位置取りは一塁の延長線上(First Base Line Extend)?
それとも三塁の延長戦上(Third Base Line Extend )?
我が国では永年にわたり「一塁の延長線上の本塁後方に位置して判定するように」と指導されてきたことは間違いのない事実である。
レフトやセンター方向からの送球が反れたとき、球審が一塁延長線上に位置していたためにスワイプ・タグや捕手がブラインドになってプレーが見えず(確認できず)誤審したケースがままあったことも周知の事実であろう。
球審の基本的な位置取りは、投球を判定する位置(Point of Plate)後方のセンターラインである。その位置から送球やプレーの種類などによりSwing(右か左へアジャスト)する。
昨今、審判方も国際的なメカニクスが登用され本塁での位置取りも変化しているようである。
その一端が、
(1)三塁延長線上の本塁後方に位置するというもの。レフトやセンターからの送球のプレーや送球が反れたときに起きるスワイプ・タグ等に十分対応できるものである。
(2)それと同時に、走者の進入経路や送球の質(ダイレクトかバウンドボールか、悪送球になるか、ならないのかなど)を見極め、「どの辺で」、「どんなプレー」が起こるかを予測し(Read)、プレーに応じてアジャスト(React)するアンパイアー・スキルが要求される。
(3)また、打球の方向や本塁への送球方向により一塁延長線上或いは三塁延長線上が適正かを瞬時に判断し選択(Swing)しなければならない。
(4)そして何よりもアマチュアー野球ではオブストラクションを特に留意する必要がある。それはボールを待たないで或いはボールを処理していないときに本塁を塞いではならないし、走路の一角を空けておくというアマチュアー内規があることは周知していることである。
マイナー・リーグなどでは三塁延長線上(Third Base Line Extend)で本塁での全てのプレーを判定すると規定しているようである。
総じて、三塁延長線上で本塁でのプレーを見極め(Readして)、その精度により( Reactし)的確な位置を取れるかが(Swing
and Pause)判定の重要な用件になってくる。
旧ヤンキー・スタジアムのセンター後方に設けられていたメモリアルパークの入口付近。
#10 Phil Rizzuto(“Scooter”と呼ばれた)#1 Billy Martin (ケンカやビリー・マーティン)。#44
Reggie Jackson(Mr. October)#23 Don Mattingly(第10代キャプテン)
#49 Ron Guidry(ヤンキース一筋13年)2007年9月17日撮影
Up-date yourself be fair call. |