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本塁での激突プレーに思うこと
(中)


#47 Umpire  


 メジャーの規則はいつの時代でもファンの意向や選手側の同意があって変更されてきた経緯がある。そのファンの醍醐味を奪うというのは到底考えられないし、はたまた選手側も納得しまい・・・。

だが、わが国の高校野球では平成12年(2000年)に危険防止から「捕手の本塁上のプレー」で捕手は走路の一角を空けておくという内規が設けられたのは周知の事実である。


「規則上の解釈」
走塁妨害を適用するのは「あくまで捕手のその行為がなければ当然本塁に到達できた」と判断できる場合である。
※ボールを保持する前の捕手の立つ位置
本塁の中央より右側に立ち、プレートの左半分を走者に見えるようにすること。2、またプレートより後方に位置するときでも、プレートと三・本間のラインが重なる三塁よりの接点から前方に出てはいけない。


 これは要するに「捕手はボールを捕りに行くとき或いは走者にタグしに行くとき意外は本塁の一角を置けておきなさい」というもので、ケガの防止策と高校野球のフェアー・プレー精神(?)を拡大解釈したものであろうか・・・。

 一方、過去のメジャーを紐解いてみると幾度となくこの様なプレーは起きている。100年以上も続いているメジャーでは走者と捕手の本塁での激突は普通のプレーと認識されている。

 最近では昨年4月22日のNYヤンキース対LAエンジェルス戦で同じような激突プレーが起こった。この時は、ヤンキースのマーク・タシャエラ選手が本塁前でエンジェルスの捕手ボビー・ウイルソンに左肩から体当たりしたものだった。この時も捕手はボールを確捕できないままタグに行っている。


 NYY走者M・タシャエラ選手の本塁突進
 http://mlb.mlb.com/video/play.jsp?content_id=7621457

この様に、本塁でのクロスプレーは非常に危険の伴うプレーである。
映像でも確認できるように、この時、捕手のB・ウイルソンはワンバウンドのボールを捕り損なったにも関わらず、走者M・タシャエラへ身体を投げ出す様に当たっている。メジャーでは普通のプレーでも、
我われ日本のアマチュアー審判からすればこの様なプレーはほとんどないが「走塁妨害」を判定するかどうか意見が分かれよう・・・。 What is your call?


 古くは1970年7月14日、オハイオ州シンシナティに開場したばかりのリバーフロント・スタジアムで行われた第41回オールスター・ゲームの延長12回裏に起きた激突プレーが有名である。(この球場は1996年にシナジー・フィールドと名前を変更。筆者は2000年9月15日に訪れている)

 走者は「チャーリー・ハッスル」ことシンシナティ・レッヅのピート・ローズ選手。捕手はオールスター戦初出場のクリーヴランド・インディアンズのレイ・フォッシー選手。二塁走者のローズは打者の中翼前の安打で一気に本塁を突き、捕手フォッシーはセンターからの返球をやや三塁側で捕ろうとしたが、突進してきたローズに激突された。
 フォッシーはローズに跳ね飛ばされてボールを落とし、これが決勝点となり4-5でナショナルリーグが勝った試合だった。


 チャーリー・ハッスルのスライディングです↓
  http://msn.foxsports.com/video/shows/moment?vid=310e7ae3-784b-445d-b404-c84cdd20718d


 ちなみにフォッシー選手はこの時、若干23歳。インディアンズ気鋭の選手として期待されたが、このプレーで左肩脱臼骨折の重傷を負い、9年後の1979年9月にMILブリューワーズで選手生命を終えた。

 この様な本塁でのプロス・プレーは、ファンにとって一瞬も眼が離せない醍醐味でもある。

 が・・、走者も捕手も身体を張ったこの様なプレーは、ケガと何時も隣り合わせである。しかし、メジャーではこれ等のプレーはいずれも「普段の普通のプレー」とされている。

 同様のプレーは本塁だけではなく、一塁走者が併殺(Wプレー)を防ごうと二塁ピヴォットマンへ足を絡めたり、体当たりをしたりすることが多々ある。

 MINツインズの西岡剛選手が開幕間もない4月8日、ヤンキー・スタジアムでの7回裏、二塁へピヴォットに入った折、NYヤンキースの一塁走者ニック・スイッシャー選手に足にスライディングを受け、DL入りしたのは記憶に新しいことだ。この後の西岡選手の動向は皆さんご存知のとおりである。


 これがフェアーなプレーでしょうか↓
 http://mlb.mlb.com/video/play.jsp?content_id=13555283

4月8日、ヤンキー・スタジアムでの試合の7回裏、走者一塁の時に二塁でのプレー。
走者一塁で、三塁ゴロを捕ったツインズの三塁手は併殺を狙い二塁へ送球。
二塁ピヴォットに入った西岡選手はヤンキースの一塁走者、N・スイッシャー選手を二塁封殺後、ボールを一塁へ転送しようと遊撃方向へステップしたにも関わらず、走者に足をかけられた。
日本のアマチュアーでは、これは明らかにピヴォットマンへの妨害と判断できよう。
「Time!」、「That's a interference」そして打者走者をポイントし「He's out on 1st runner's interference」とメカニックが必要だ。また、Major League Umpire Manual 2011(MLB審判規則解釈)には以下のように記載されている。2.44(a)、7.09(f)の解釈:「走者の走塁に関係のない故意な行為で併殺が妨げられたと審判員が判断すれば、打者走者に対しても同時にアウトを裁定する」とある。
原文では「If in the judgment of the umpire such intentional act was to prevent a double play, the umpire would rule the batter-runner out as well.」 となっている。
このような時は落ち着いてプレーを観察することが肝要で「決して驚いてはいない」とジムは教えている。


 このように、二塁寸前で既に「死んだ(アウト)」と封殺宣告を受けたにも関わらず、その走者がピヴォットマンへ足を絡めたりするのである・・・。
この走者の行為の方がよっぽど悪質である

 むしろ、二塁でのこの様な走者の行為(プレー)にこそ守備妨害を採ることが必要であろうと筆者は考える・・・。
 が・・・、これは「審判員が判断すれば・・・」の話だから口を挟む余地なしか・・・?

(つづく)


(2011年7月15日)


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