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球審と捕手の関係


#47 Umpire.


 「野球は一人又は複数の審判の下にプレーするものである」と規則書に謳われている。そして、審判員は試合を円滑に進行させ、無事に終了させることが最大の責務である。
 
 球審から「Play!」がコールされる。捕手と投手のサインが決まった。捕手が構えた。投手が投げた。打者が見送った(打つときもあるが)このとき投球の「Ball」、「Strike」の裁定に介在するのが審判いわゆる球審である。

 では、どのようにして投球を判定しているのであろうか・・・? 考察してみよう・・・。

 先ず、(1)投手板に着いた投手の全体像を観る。(2)投手が投球動作に入ったら握っている球に目を移す。(3)投げた球の軌道を眼で追い、捕手が捕った位置を確認する。(4)その投球がストライクゾーンを通過したか否かを見極める。(5)そして、その結果で良い球「Strike」或いは悪い球「Ball」を判定しているのである。


写真
【2005年9月4日 ワシントン、JFKスタジアムにて撮影】


 その際、球審は捕手の構える位置によって判定する位置をアジャストしてる。
また「スロット」と呼ばれる打者と捕手のすき間から「トラッキング」と云う技術を駆使し投球を観察しているのは云うまでもない。

 球審はこのような動作を一試合に300回以上も繰り返すのである。体力的、精神的そして技術的にも大変な作業である。決して簡単ではないことを皆さんに理解していただきたいと思うのであるが・・・。

 そこで重要なのは投手や捕手との関係だ。投球動作と捕手の動きや構え方により間合いやタイミングそして判定位置も変わってくるが、投手捕手との相性も大事である。
 
 ★いろんな捕手がいる
(1)捕球の上手い捕手
(2)構えのどっしりした捕手
(3)内外を巧みにリードする捕手
(4)構えが高い(低い)捕手
(5)捕球面をしっかり見せてくれる捕手
(6)捕球直後にミットを動す捕手
(7)「入った」と声を出しながら捕球する捕手
(8)要求(球)側と反対方向でミットを鳴らし、打者にフェイントをかける捕手
(9)捕手席からはみ出して構える捕手
(10)バットが当たりそうな位置に構える捕手
(11)打者から遠く離れて構え捕手等など・・・

 そういう捕手を前にして、球審は仕事(投球判定)が「円滑に行くか、行かない」は確かにあると云える。一方、俗に云う「良い捕手」、「良くない捕手」はいるのであろうか?

 どんな捕手を前にしても球審は「基本どおりに投球を判定すればいいのである」と思うのだが・・・。どんなものであろうか?? 

 しかし、球審にとって「良い捕手」、「良くない捕手」と云われる事は事実であろうし、判定の際に少なからず影響があることもしかりであろう・・・。

では、一般的に良い捕手と云われているのは?
(1)捕球力に優れた捕手
(2)捕球型がどっしりと、しっかりしている捕手
(3)捕球面を良く見せてくれる捕手等と云うことになろうか・・・
 こういう捕手だと、球審は捕手を信頼し投球を裁定出来ることが多い。一方、捕手の方も球審を信頼し、もてる配球術を発揮し打者を翻弄するのである。また、きわどい投球を「Ball」と判定した時には、しばらくの間ミットを留め、球審に無言の抵抗やアピールをして来る捕手がいるのも確かである。そして、これまた一般的に、良いと云えない捕手とはどんなだろうか?

(4)前述のミットを動かす捕手などは典型的なものであろうか・・・?
 この「ミットを動かす」と云うのは、球審の眼を見方につける一つの技術といわれた時代があった。ボールをストライクに見せかける捕手の高等(?)テクニックだったのである。

 しかし、現代野球では最大のマナー違反といわれているのは承知の通りである。

 球審はそんなことでは決して騙されませんゾ。何故って、トラッキングという技術でしっかりと投球や捕球面を観察しているのだから・・・。

 ミットを動かしてもストライクゾーンを通過していれば「Strike」である。ミットを動かしたからといってストライクゾーンを通過した球を「Ball」にしては絶対にいけません。

 また、ストライクと裁定しなければならないところをボールと判定し、その原因がミットを動かした捕手の所為であってはなりません!!

(5)捕手席でよく動く捕手もいる。
 捕手は投球の組み立てにより、捕手席をいっぱいに使い自身の捕球位置を変えてくる。捕手はボックス内の移動は自由であり動きの制約はないのである。

 何故って、審判の判定しやすいようにするのが捕手の役目ではないからである。

 捕手が動こうが、ミットを動かそうが、構えが高かろうが低かろうが、球審はその捕手に対応しなければならないのだ。

 また、動き過ぎるから或いはミットを動かすからと云ってストライク裁定がまちまちであってはならない。

 そんな時にこそ、球審は捕手の動きに連動して構える高さやスロット(打者と捕手の隙間)をアジャスト(調整)しなければならないことを肝に念じておこう。そして充分なトラッキングで捕球面を確認しBall、Strikeを判定すべきである。

 それには球審の構え「基本の三原則」がある。
(1)スタンス、(2)高さ、(3)前傾度である。いずれも投球を判定する際の重要な要素だ。


写真
【完璧な構えのテッド・バレット審判。打者アルバート・プーホルス選手。2004年8月25日 シンシナティ、グレートアメリカン・ボールパークにて撮影】


 余談であるが、背の余り高くない筆者などは背の高い捕手には何時も苦労している。何故って背が低い故に的確な構え(顔の高さや前傾姿勢など)が取りにくいのである。そのためにスタンスを狭めて高さを保持し、トラッキングしなければ成らないのである。

 また前傾姿勢も余り取れず、ほぼ垂直に構えるのであるが、非常に窮屈な姿勢になる。

 そして厄介なことは、この背の高い捕手が時として中腰に構えるときである。捕手の背中が断崖の如く目の前を塞いでしまう。投手も投球もまるっきり見えない。こんなときはスロットだけでも充分確保するという意識を常に持って臨んでいる。また、構えが高くなった分、低めの球の見極めが非常に難しくなる。

 そういう時にはトラッキングの反復をし、ストライクゾーンを通過したかどうかを見極める様にしている。それでも低めの見極めは本当に難しい、難しい・・・。

 審判にも個々の特徴があるように、捕手にも様々な特徴がある。投手や捕手がどうであれ、球審は粛々と投球を判定するだけである。

 投手が投げた球を打者が打った。それを審判が「Fair・Foul」、「Out・Safe」と判定。または投手が投げた、その投球を打者が見送り、捕手が捕った球を球審が「Ball」、「Strike」と裁定し進行して行く野球。

 そんな野球(Baseball)ですが、あなたは審判がいない試合を想像したことがありますか?選手だけで何が出来ますか? 判定は誰が下すのですか?選手ですか?否、審判員である。

 審判のいない試合は想像し難い。が、実に味気ないものであろうと推察は出来る。


写真
【2009年7月26日 ニューヨーク州シラキュース市 アライアンスバンク・パークにて撮影】


 野球の守備はバッテリーと中翼手、いわゆるセンター・ラインが重要だといわれる。特に投手と捕手は守備の要である。他方では打者や走者に対する防御でもあるわけである。

 一方、攻撃面では先頭打者が重要視される。先頭打者が出塁して、盗塁し、次打者の「Hit and run」で得点するのが標準的な攻撃の型である。(わが国では送りバントが基本といわれているが、昨今、この考え方に変化が見られる)

 試合の円滑な進行と試合を完結させる八割方は球審の技量の依るといわれる。球審の、投手・捕手間の投球判定は野球をする上での基本的動作であり重要なものである。

 いろんな投手そして捕手が居よう・・・。

 審判(球審)は投手や捕手の如何に問わず、スロットを確保し的確な構え(スタンス、頭の高さそして前傾姿勢)からトラッキングして投球判定することが大事である。

 そうする事により、ボール・ストライクの判定が安定し、観衆から、選手そして同僚から信頼を勝ち得ることが出来る。

 Enjoy Umpiring and have more fun!


(2011年11月15日)


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