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審判ミタ・マスク越しから草野球をミタ


臼井審判員


 (1)捕手は頭脳で勝負

 このマスクを見てください。今から15年前に車が放火されて、車内に置いてあった物はすべて焼きつくされました。その中で唯一残ったのはこの審判マスクです。捨てきれずに今でもたまに予備で使用しています。


マスク

 永年に渡って審判マスクから野球を見ていますと、チームにいろいろと注文をつけたくなります。例えば「このチームは野球に集中していない」「良いチームだが監督が野球を知らなすぎる」「打てる球なのに…」等々。

 今回はバッテリーについて

 私は初めて審判をやるチームでも、このバッターは打てるか、打てないかは一巡目である程度分ります。打者の構えと足の運び方を見て。それに打席に入って「気迫」が感じられる人はよく打ちます。なんとなく打席に入る人はほとんど打てません。
また、いつも審判をしているチームは、各打者の好きな球種、苦手なコースまで分ります。しかしジャッジをする時にはすべて頭を真っ白にします。

 2アウト満塁、8番打者、0ボール・2ストライク。さて何を投げるのかと期待していると、高めの遅いボール球を投げました。8番打打者にとっては絶好球なのです。見事に打たれました。

 捕手は1ボール・2ストライクにする「見せ球」だったのでしょうか、2ストライ取った球種・コースを頭に入れておけば、ここは力のある低目のボール球を投げるべきです。コースによっては三振の可能性が高いのです。

★教訓・2ストライクから「遅い球」を投げると大怪我をします。

 次はよくあるケースですが、初回の表1番打者、2番打者を凡打に抑え、三番打者には、何故かボール球先行で始まります。2アウトを取った球と全く威力が違うのです。これは慎重のあまり捕手が投手の能力を半減させているのです。

 そして3ボールになり四死球です。4番打者にはファールボールで粘られて、タイムリーヒットで1・2塁。こうなってきますと早くアウトを取りたい心境にバッテリーは追い込まれます。5番打者にはこれをしっかりよみきられ、初球ストライクを見逃さず2点タイムリーです。

 さらにエラーがらみで6番・7番・8番・9番と打たれて初回で大量失点になります。これは80パーセント捕手の責任だと思います。1番打者、2番打者を凡打に抑えた投手のリズムを狂わしてしまったのです。さらに守りのリズムもおかしくしまっているのです。

★教訓・初回の捕手のリードは大胆かつ慎重に攻める。初回で捕手の頭さ・悪さが審判にはよく分かります。

 投手には投げる「間合い」があります。マスクから見ていまして「間合い」がおかしい時にはストライクが入りません。とくにセットの「間合い」は捕手のリードの活躍の場になります。「間合い」を崩さずリードする捕手は得点を許しません。

 ストライクが入らない投手に2度も3度も牽制球を投げさせ「ナイス牽制」などと言っている捕手は、投手のコントロールを崩しているのに気づかないのです。

 ヒットを打たれると「どんどんと真ん中に投げて来い」と声をかけて、投手を勇気付ける「間合い」を取る捕手は不思議と得点を許しません。所詮、投手は「わがままなお山の大将」なのです。この「わがまま」を上手くリードするのが捕手の最大の仕事なのです。

 面白いことに捕手が交代すると、今まで好投していたのがガラッと代わってストライクが入らなく打たれてしまうことがあります。また、その逆もあります良い捕手に代わって見違えるような投手に変身することもあります。

 マスク越しにバッテリーを見ていまして、いい投手との出会いは多くありますが、中々良い捕手との出会いは少ないです。とくに好リード・肩の強さ・好打者。三拍子揃った捕手には出会いません。

 マスク越しから見ていまして捕手ほどやりがいのあるポジションはないと思います。とくに要求した球がピタリと来て三振など取った場合。フルカウントから高めの速球を空振りさせた場合、ギリギリのコースに決まってスリーアウト・ゲームセット。捕手の独壇場です。

 私の知っている「三拍子揃った捕手」は1人しかおりません。もっとも「三拍子揃った捕手」ならば、ノンプロかプロ野球に行っています。それほど草野球では貴重な存在なのです。

(つづく)

参考資料「球審と捕手の関係」
http://www.mbua.net/me/me_data/2011/11-018.html

審判員の背中
http://www.mbua.net/me/senaka/senaka009.html

珍・チン物語
http://www.mbua.net/me/senaka/senaka017.html


(2012年1月1日)


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