派遣審判員の歴史と今後の展望と役割 審判用マスク
甲斐 雄之助

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★21世紀の社会とアマチュア野球における派遣審判界の展望(その2)

 今回が本稿の最終回となります。先ず派遣審判員が持つべきビジョンについての思いを述べさせていただきます。21世紀はネット情報を媒介手段とした、個々の自由な意思に基づいた野球の多様な催しがアマチュア野球の主要な一画を占め、定着し、発展すること、そして派遣依頼を受ける審判員は特定の複数制審判を除き、他はすべて一人制審判であることについては前回述べました。

 この一人制審判は派遣のニーズとして今後も重要な役割をになうことになります。従って、一人制審判を主要なテーマとして述べることにします。

 派遣依頼を受ける審判員として、この責務を果たすべきメカニックの確立についての基本的なビジョンと実行すべきプロセスを持つことは極めて重要な責務であります。

 一人制審判へのニーズが高まるなかで、この分野で審判活動を行う組織、グループ及び個人が増加してきており、ネットのホームページを検索すれば、その実態を知ることができます。

 どのようなビジョンを持って一人制審判の依頼を受け、審判をするかについての心構えを知ることができる内容を明示しているホームページが少ないことは残念であります。

 この点は依頼者が一番知りたいところであります。球審と塁審の仕事を一人で担当することは、既に繰り返し述べてきたように、アンパイアリングにおける困難性及び不可能性をどのように認識して受け止め、自己のアンパイアリングメカニックを組み立てるかが重要な課題となります。

 一人制審判のメカニックマニュアルは複数制審判を基本とする講習会や審判教室では提示されません。従って、依頼を受ける組織、グループ及び個人が審判技術の確立についてのビジョンと確立のためのプロセスを持ち、基本及びメカニックマニュアルを築くことが大切です。

 私が本稿で述べたアメリカの審判学校で教える審判技術習得への行動にはじまる基本技術及び二人制審判のメカニックの習得についての行動、そして二人制審判のメカニックパーツを組み入れた一人制審判のメカニック確立までの経過については、それぞれの年代をのべるについてのメインテーマとなっております。

 本項の主旨を理解するための参考例として参照してください。一人制審判は審判員にとって過酷な仕事であり、その困難性を克服するためのメカニックを確立するための努力と経験のうえに成り立つものであります。この信念がなく、漫然とホームプレートの後方に立っている状態では単なるダロー審判になってしまいます。

 塁審の役割をどのように果たすか、これについてメカニックの確立が一人制審判の担当能力を高める秘訣であります。次に審判技術の習得に際し、そのための基本事項を提供し、メカニックの完成へと導く指導システムのことについて言及します。

 日本におけるアマチュア野球審判員の育成は連盟組織内で行う講習及び技術指導を基本としており、アメリカの審判学校が審判技術の習得を希望する者及びマイナーリーグからメジャーリーグへの審判員を目指す者に広く門戸を解放しているような審判員育成システムがありません。

 野球ゲームの国際化が進み、審判技術の基本及び判定メカニックの統一性を持ったレベルアップが進むなかで、審判員の育成は組織内に従属したものではなく、独立した組織が基本及びメカニックについて統一した指導を行うことが望まれます。
 先に述べたアメリカの審判学校のように審判技術の習得を目指す者に、広く門戸を解放する組織が日本にも実現することを願ってやみません。

 ★ プレイヤーに信頼される審判員であること。

 まず、派遣審判員の立場について考えてみます。各種連盟に所属し、連盟が催す大会の審判員との相違は派遣依頼を受けて審判を行うことであり、主催組織の審判員ではないことであります。

 派遣依頼者は依頼を行うについて依頼先のプロフィールをネットその他の情報で認識するのが通常であり、好ましいアンパイアリングを期待して派遣を依頼します。そして、提供するアンパイアリングが期待に添うものであれば、これを絆として依頼関係が続きます。

 依頼者との絆の原点はまさに信頼にあり、信頼感を与えるアンパイアリングの提供が派遣審判員の責務であり生命線であります。
 依頼者から信頼を失った組織及び審判員は派遣の世界から脱落してしまいます。では、どうしたら信頼感を与えるアンパイアリングが出来るか、これについては、私が本稿で述べてきた35年にわたる派遣の軌跡を思い起こし、ご理解いただくとともにじぶん自身の在り方を確立してください。

 これにもう一つ大切な信頼感醸成の要因について述べれば、審判員の人間性であります。豊かな社会常識と真摯な気持ちを常に維持し、明確な判定行動を行える豊かな社会常識と真摯な気持ちを常に維持し、明確な判定行動を行える審判員であることです。

 以上で本稿を閉じることにします。派遣の経験をブレイバックするなかで感じたことは、今後の展望で述べましたように、派遣審判の果たすべき役割はますます重要な存在となります。プレイヤーの皆様、そして審判員の皆様のご発展をお祈り申し上げます。(おわり)

(2011年9月1日)


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