審判員の 背中 背中画像
□□ 臼井淳一審判員 □□


【8】 審判員の背中に耳が…
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 審判員は眼も良いですが、実は耳も良いのです。私などはいまだに「視力検査」をいたしますと「1・5」なのです。年とともにだんだん遠くが見えるようになりました。その変わり「小さい文字」がまったく見えなくなり、カウンターもナイターの時などは確認がしづらくなりました。

「聴力検査」は残念ながら、反応が鈍くなりました。ところが球審をやっておりますと、不思議なことに「ベンチの声」が良く聞こえるのです。
 とくに審判に対する「不満」「不平」はまるで背中に耳がついているように、筒抜けに聞こえてくるのです。

 選手の皆さん。なぜだか分かりますか、それは「集中」しているからです。別にベンチの「声」に集中しているのではありません。球審を行っていますと、「ボール」に集中します。集中しっぱなしではこれまたいけません。「集中」と「リラックス」を交互に繰り返して球審を行います。

 実は「リラックス」している時に「ベンチの声」が良く聞こえてしまうのです。リラックスしているといっても神経は研ぎ澄まされています。まぁ、通常の状態ではないのです。その証拠に審判員は試合が終わりますと、よく忘れ物をいたします。私などは車を走らせてから何度も止まり「点検」をいたします。10分前に点検をしたことを忘れてしまうのです。神経を集中しますとその反動は必ず来ます。
 これは、私だけではないようです。よく選手から「○○審判さん忘れ物です」という連絡をいただきます。

 そうそう「ベンチの声」でしたね。これが球審にとって「耳障り」なのです。特にベンチで野球と関係ない話を「ぺちゃくちゃ」とやられますと集中ができなくなります。
 一度「試合が終わってからやってくれ」と注意しました。野球に関係する話ですと一向に気にならずに耳を通りぬけてくれます。

 多少のストライク、ボールの判定に対するベンチでの「ブツブツ」は心地良い刺激となります。この「ブツブツ」も度が過ぎますといけません。
 昔、ある芸能人の試合で、終了した後も「あの球はボールだった」と言っている芸能人がいました。やはりこの人は「売れない芸能人」で終わってしまいました。

 先日、突然ベンチからゲームに関係なく「やったー」という声が聞こえました。周りにいた選手も「オオッー」という歓声が上がりました。なんだと思いますか?。そうなのです「馬券が当たった」のです。

「お願いします。お願いします。ここは野球場です。競馬場にとっとと行ってくださ
い」……もっとも耳障りな歓声でした。


(2004年4月15日)


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