審判員の 背中 背中画像
□□ 臼井淳一審判員 □□


【19】 野球文化の質
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「大阪Aチーム」対「大阪Bチーム」の試合の審判を都心のど真ん中の球場でやりました。

 関西弁が飛び交う場面は、映画やテレビで見たり、聞いたりしたことはありますが「生・なま?」の声を大勢に囲まれて聞いたのは初めてです。一瞬「あれ?ここはどこ?通天閣の下?東京タワーの下?」と違和感を覚えました。

 この審判の感想を率直に述べましょう。まず、両チームとも四球で出ようとはハナから思っていません。バットの届く範囲はどんどん打っていきます。なんと不思議なことに「バットの芯」に当ててヒットにしてしまうのです。

 また、たえと「長打」を打っても捕球されてしまうと「しょうわないわ」の一言だけです。東京では「ナイスバティグ!ほしかった」とナインから拍手と声が出ます。

 ヒットで塁にでても、エラーで塁に出ても、体中で「喜び」を現します。ここも東京とちがいます。「エラー、エラー」と騒ぐのが東京です。

 この試合2回を終わって10対1とAチームがリードしていました。ところが負けているBチームも、勝っているAチームも一向にスコアを気にしていません。というよりは両チームとも途中のスコアなど全く見向きもしません。気にしているのは審判の私だけなのです。

 この試合は終わってみれば17対15でAチームの勝ちでした。両チーム整列して初めてスコアボートの結果を見て「ほんま、いい試合。審判さんおおきに」の一声。両チーム全員が楽しんだ様子でした。

 関西の人たちの「繊細」なところも垣間見ました。それはファールボールを私に投げてきましたので「注意」しましたら。すぐに責任者が「すいません。お気にさわりましたか。許してください」と標準語で謝ってきました。東京ではありえません。

 試合が終わって「関西弁はきついでしょう。審判さん疲れましたか?」と言われたときには思わず胸がジーンと来ました。そしてこう言いました。
「いやー。とても気持ちのいい審判をやらせていただきました。皆さん楽しんで野球をやっていますね。ありがとうございました」。

 この審判を終えてつくづく感じました。野球に限らず「文化・スポーツ」の楽しみ方は関西というよりは「西」にはかないません。

「江戸幕府から400の歴史」の首都圏と「古都千年の歴史」近畿圏とは、いろいろな意味で違いがあります。たかが「野球」ですが、こういう見方もあるのではないでしょうか。


(2004年10月1日)


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