□□ 臼井淳一審判員 □□
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【23】 喜怒哀楽
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1アウト、1塁−3塁。投手はど真ん中のストライクを投げました。打者はワザト空振りをしました。1塁走者は2塁へ走りました。 ここで面白いことが起こりました。捕手は2塁へワンバンドで投げました。それを二塁手が前進してカットに入りました。1塁走者はそれを見てスピードを緩めました。 なんとカットに入った二塁手はボールを取らずに、2塁ベースに入った遊撃手に任せました。1塁走者はアウトです。さらに3塁走者はホームに向かいました。ボールは転送されてホームアウト。一瞬のうちにチャンスは消えました。 このような「頭脳プレー」には審判員は心の中で、守備側のチームに「拍手喝采」。称賛したくなります。攻撃側のチームには「ワンパターンのくり返し」で、2、3塁にして打って点が入るのかな?。 ここから「核心」に入ります。この場面では投手がストライクを投げてくる確率は50パーセント近いのです。それもストレートです。打者は見送り・空振りは90パーセントです。そして1塁走者は2塁へ走り、2、3塁にします。 審判員もこの「ワンパターン」は、ちょうどいい「息抜き」になるのです。そしてここで得点する確率は意外と低いのです。とくに打順が下位の場合ほど結果は「〇」に近くなります。クリーンアップの場合でも、得点の確率は2割ぐらいだと思います。 投手は1ストライクを取ったら2−3塁でも楽になるのです。 ところがです。1−3塁で初級ストレートを狙って打つと結果はどうか。得点の確率は3・5割と高くなります。(私の感ピューター調査によると)。それと1−3塁は内野ゴロでも守備側は守りにくくエラーで得点の確率も高くなります。 さらに、この場面でのスクイズバンドは、残念ながら2004年度の審判では成功例が4つしかありません。 1アウト、1−3塁は初球打ちをお勧めいたします。初球ど真ん中のストレートを打たないことにより、勝負は投手の勝ちになります。審判員の「息抜き」の場面にしないでください。また、ノーアウト1−3塁でも積極的に打っていく野球が私は大好きです。 「勝利」ということは相手をねじ伏せることです。負けた相手もそれによって奮起するでしょう。それがスポーツの楽しさです。 実は、審判員も勝負の決着が、「ノックアウト」が一番すっきりするのです。誰が見ても「1−0で勝負あり」を望むのです。それが審判員の微妙な判定で決着する試合ほど、後味が悪いものはありません。まぁ「そのために審判がいるのだ」と言われましたらごもっともです。 「守備妨害」か「走塁妨害」を瞬時のうちに見極める方法として、まず「タイム」をかけます。実は「タイム」と言いながら頭の中で「時間稼ぎ」をして、そして整理して判定を下すのです。 さてさて、これにより決勝点が入り「ゲームセット」。負けたチームは審判員に多いに「不満」でしょう。勝ったチームも「勝利の充実感」は薄いてしょう。 こういう時の「審判員の背中」は泣いております。 野球ほど「喜怒哀楽」の激しいスポーツはありません。エラーをして2点失っても、その本人が満塁ホームランを打てば「泣いたカラスがすぐ笑う」のです。 「審判員の背中」にも「喜怒哀楽」があります。ただそれが選手の皆さんのように「表」に出せないのです。実は、実は「背中」で楽しんでいるのです。 |
(2005年1月1日) |