(2) 捕手と審判
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 二人制審判をやっていまして、一番正確に判定できますのが盗塁です。タッチされても足が先に入っていたり、手がベースの横に着いていたりするのがはっきり見えます。

 プロの審判の方はセンチ範囲で確認できるそうです。牽制球でも同じことが言えます。

 これを一人で判定するのは、それも正確さを要求されては、審判員としては辛いものがあります。けれどどちらか判定しなければいけません。

 一人制審判の場合はベースに近づくことも大切ですが、その前にいかにベストの「角度」から見るかです。とくに2塁への盗塁は捕手の「送球・球筋」を確認して角度をとる必要があります。それに右・左バッターによっても角度を変える必要があります。

 バッターが左で、捕手の送球が右へそれている場合とか、また、その反対もあります。すべて右へ回り込んで角度を取って判定いたしますと、全く見えない時があります。

 よくタイミングで判定するといいますが、なるべく正確に見るよう心がけています。一番こまるのはタッチが甘いことです。完全にアウトなのにランナーが来るのを待っていてタッチする場合です。上手いランナーですと直前に回りこむ場合かあるのです。

 一人制審判で一番困るのは、一塁コーチが大声で判定することです。特に一塁での判定に多く見られます。球審より近くで微妙な判定はよく見えるかもしれません。けれど審判員より先に「コール」するのは越権行為です。

 最近のプロ野球を見ていますと、「判定への抗議」がチームへの「檄(げき)」に利用しているとしか思えない抗議が多く見受けられます。これでは審判員もたまったものではありません。

 一人制審判の場合は、どうしても一対一の「話し合い」になりがちです。審判員が複数の場合は、監督を通じて球審へ。球審も審判員を集めて相談します。

 審判員が一人であることを利用して「理不尽」なことを言って来るチームが時々あります。特に捕手が一球、一球に「低いの」「高いの」「コース」と聞いてくるのには、球審をやっていて思わず「貴方が審判をやったら」と言いたくなります。

 このようなチームには試合が終わったあと、監督を通じて捕手の態度を注意いたします。と同時に捕手が態度を改めない限り「審判依頼お断り」とはっきり言うようにしています。

 審判員と捕手はピタリと身体を寄せ合い、他の選手より永い時間「お付き合い」する間柄なのです。実は審判員も両チームの捕手とは仲良くやりたいのです。捕手がヒットを打てばコッソリ「ナイスバッティング」なんて言葉をかけたりしています。

 とくに一人制審判の場合「味方」は誰もいません。身近にいます捕手とは仲良くしたいのです。

 微妙な投球を「ボール」と判定したあとに、捕手から
「少し低いよ。いい球だー」と投手に声をかけたりしますと。
 審判員は心の中で「ありがとう。次は気合を入れて見るよ」と捕手に感謝します。

 完全試合を達成する条件は、もちろん投手が最大の功労者ですが、これも捕手と審判の呼吸が「ピタリ」と合うからできることと思っています。

 一人制審判の場合「審判員を味方」につけるコツは、審判員のミスジャッジにおおらかな態度をチーム全体でとることです。

 ミスジャッジは審判員本人が一番よく分かっているのです。


(2006年5月15日)


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