(27) 一人制審判「最終回」
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 2アウト満塁、2ストライク・3ボールです。投球と同時に走者は一斉にスタートを切ります。打球はショートへのボテボテのゴロです。一塁への送球は間一髪セーフです。

 その間に3塁走者ホームへ、2塁走者もホームへ向かっています。一塁手からの送球が逸れて、2塁走者も間一髪セーフになりました。

 一塁にいました走者が3塁まで走ってきます。捕手は3塁へ送球しました。この判定もしなければなりません。

 一人審判で数秒の間にいくつもの判定を下します。ここで一番しっかり見なければならないのは1塁の判定です。ここでアウト・セーフは大きな比重を占めます。次に2塁走者のホームでの判定です。

「一塁・セーフ。ホーム・セーフ。3塁・セーフ」と自信をもって判定をしなければなりません。

 3塁走者のホームの触塁はチラッと確認しましたが、その他の触塁は全く確認することができません。

 昔、審判になりたての頃「一人審判では他の触塁も確認するのですか」と先輩審判員に聞いたところ。

「神様でもできない。一人審判の泣き所だ」と言われました。

 特に足の速いチームが揃っている場合は、一人審判はこの場面では神経を研ぎすませて対応いたします。一段落しますと疲れがドット押し寄せます。

「正しい角度と距離でプレーを見ることで、より正確なジャッジができる」と言われますが、残念ながらこのようなプレーには一人審判では適用することが難しいのです。

 また一人ということは「相談相手」がいないため、野球規則を間違って適用してしまうこともあります。

 先日もボール4のボールを捕手がそらし、バックネットの金網に挟まってしまいました。選手からはこんなアッピールがありました。
「4球で1塁へ、金網に挟まったからさらに二塁へ行けるのではないですか」

「なるほ。どそれもそうだ」などと同調してしまうととんでもないことになります。

 また、攻撃側が2アウトで打順を間違えました。1球を投球しましたら。
「審判さん、打順を間違えています。2アウトだから。チェンジ。チェンジですよ」とアッピールがあり、守備側はどっと引き揚げてしまいました。

「うーん。規則はどうだったかな(?_?)。まぁ。両チームとも何も言わないのでいいかぁ」とやり過ごしてしまいます。

 実は試合の後で「1ストライクから正常な打者が打てばいいのだ。失敗した」と気がつき、悔やまれて、悔やまれて仕方がないのです。

 一人審判は全ての事を瞬時に一人で裁かなければなりません。相談相手がいないまま、間違った規則適用をしてしまいます。

 不思議なことに二人制審判の時には、こんな単純ミスはしません。やはり相棒がいるということは気持ちの上でも余裕をもってジャッジができるのです。

「一人制審判の死角」ということでいろいろ書いてきましたが、今回を持ちまして終わりにいたします。


(2007年8月1日)


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