スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■5 賭博は悪か? スポーツとギャンブルの密接な関係

 野球賭博などのさまざまな賭博行為が明るみに出て相撲界が危機に陥っている。

 賭博は刑法で禁止されている犯罪。とりわけ野球賭博は暴力団の資金源であることが明白で、許される行為ではない。
 が、一方で、世界的には、賭博は解禁(合法化・民営化)される方向にある。
 イギリスでは、1960年に賭博解禁法(Betting & Gambling Bill)が施行され、誰もが自由に「ブックメーカー」(賭け屋)を開業できるようになった。その直後、ロンドンでは300以上のブックメーカーが出現した。
 それは、ギャングたちによって「地下」で営まれていた賭博が、一気に「表」に出現したからだったが、しばらくすると暴利を貪るブックメーカーは消え、リーズナブルな手数料で顧客に正当な利益を分配し、税金もきちんと支払う健全なブックメーカーだけが残り、10年後には約10分の1の数に減ったという。

 1920年代のアメリカで禁酒法が施行された時、多くのギャングが密売酒で多額の利益を得たように、「悪」は禁止されたところに群がる。そこで、賭博も「悪」とは考えず(一種の「必要悪」と考えて)、解禁して管理するほうが社会のために良い、というのが昨今の世界の考え方だ。

 人間の文化の起源には必ず宗教とかかわりがあるといわれ、神々を讃える行為から芸術や芸能が、神々のような素晴らしい肉体を得ようとする行為からスポーツが、神々の意向(神託)を伺う行為からギャンブルが生まれたともいわれる。
 とくにスポーツとギャンブルは近い関係で、W杯でも、日本優勝に賭けると倍率は100倍以上…などと報道もされた。つまり、世界中で「サッカー賭博」が行われているのだ。
 暴力団対策のうえで、日本も、そろそろ賭博解禁を考えてもいいのでは?


(「損保のなかま」2010年8月1日付より)


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