スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■6 世界柔道の「原点回帰」で「本家日本の柔道」は?

 9月9〜13日、「世界柔道選手権」が東京の国立代々木競技場で開かれる。
 世界柔道の東京開催は、56年第1回大会と58年第2回大会以来52年ぶり。約半世紀前は日本選手権と同じ無差別級のみで、第1回は夏井昇吉六段が吉松義彦七段を判定で下し、優勝。第2回は曽根康治五段が神永昭夫四段を優勢勝ちで破った。

 いずれも日本人同士の決勝だったが、61年の第3回パリ大会ではオランダのヘーシンクが前回優勝の曽根を袈裟固めで破り優勝。そして64年、柔道が初の正式競技となった東京五輪大会でも、無差別級でヘーシンクが神永を袈裟固めに下し、日本中が「お家芸の危機」と騒いだのだった。
 以来「日本の伝統的柔道」と「世界のJUDO」は事あるごとに衝突。あるいは軋轢(あつれき)を生み続けてきた。が、今回の大会のテーマは「原点回帰」だという。

 これまで「一本」「技あり」「有効」「効果」と細かく分かれていた技に対する評価から「効果」がなくなり、犯則行為に対して審判の与える警告も「注意」「指導」とあったうち「指導」がなくなった。
 要するに、レスリングのように細かく「ポイント」を積み重ねるという試合形式を、極力排除しようという狙いである。そのため、レスリングのタックルのような技(朽木倒し、双手刈り、肩車といった技を突然最初にかけること)を禁止することになった。
 そうして明治時代に柔術諸派の技をまとめて柔道を創始した嘉納治五郎の「原点」に「回帰」しよう、というのが半世紀ぶりの東京大会の大きなテーマになっている。

 さて「JUDO」は「柔道」の本来の姿を取り戻せるか?
 ちなみに日本の元五輪メダリストによる日本人選手の金メダル予想は、男子1個女子3個。
 もう少し…と誰もが思うところだが…。


(「損保のなかま」2010年9月1日付より)


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