スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■10 日本のフィギュアスケートは何故こんなに強い?

 日本のフィギュアスケートは、いまや世界最高レベル。

 浅田真央の不調は気がかりだが、安藤美姫、鈴木明子に続き、2010年ジュニア世界一の村上佳菜子が急成長。男子も、世界選手権優勝の高橋大輔を筆頭に、織田信成、小塚崇彦、さらに村上と同時にジュニア王者となった羽生結弦や、無良崇人、南里康晴、町田樹など、世界上位レベルの実力選手が目白押しだ。

 今季のグランプリ・ファイナルに進んだ世界のトップ男女各6人のうち、半数の各3人合計6人の選手が日本人。なぜ日本人は、これほどフィギュアスケートというスポーツ競技に強いのだろう?

 それは費用のかかる競技を支える経済力があること。その結果、競技人口が比較的多いこと。さらに、過去にクロード・ルルーシュ監督の1968年グルノーブル冬季五輪の映画『白い恋人たち』が大ヒット(小塚選手の父親が出場)。72年札幌冬季五輪では、銅メダルの「妖精」ジャネット・リンの可愛さが大人気。それらに感激した世代が子供たちにフィギュアスケートを薦めたことも影響している、という人もいる。

 しかし注目したいのは、体操競技での日本人の強さだ。アテネ五輪で男子団体が金メダルを獲得し、「お家芸復活」と騒がれるまで、「体操ニッポン」は少々低迷していた。が、60年のローマ五輪から78年のストラスブール世界選手権まで、日本男子体操は5回のオリンピックと5回の世界選手権で連続10大会世界一。
 これほど世界に強さを示したスポーツは他にない。
 それは東京タワーを命綱なしで建設した鳶職や忍者の伝統(ロシアはバレエ、中国は雑技団の伝統?)と言う人もいるが、日本人は身軽に軽快に美しく飛び跳ねたり、身体のバランスをとるのが得意なのは、疑いない事実のようだ。


(「損保のなかま」2011年1月1日付より)


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