スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■12 斎藤佑樹投手は高齢化社会の象徴?

 早稲田大学からファイターズ入りした斎藤佑樹投手が騒がれている。高校時代から「ハンカチ王子」で話題になったヒーローだけに当然だろうが、彼を取りあげたテレビの某キャスターの言葉に少々首をかしげてしまった。
 「人気が低迷するプロ野球界を救うヒーローが出現……」
 この発言は間違っている。
 プロ野球の観客動員数は、昨年(2010年)12球団合計で約2214万人。1球団平均約155万人。それは一昨年より約26万人(1球団平均約2万1千人)減少したが、誤差の範囲といえるもの。
 観客数が正確に発表され始めた05年以降、大体同じ数字で、それ以前は「水増し」した数字が発表されていたが、1990年=約2060万人。1970年(巨人の黄金時代)=約950万人。1950年(2リーグ制始まる)=約410万人……と、日本のプロ野球は、長い歴史のなかで観客動員数を大幅に伸ばし続けてきたのだ。
 ひょっとしてテレビのキャスターだけに、昨今の野球中継の視聴率の低さが念頭にあったのかもしれない、それは生活習慣や娯楽環境の変化(毎夕食時に巨人戦をテレビで見る習慣がなくなった)だけのことだ。
 実際には、昨年の日本シリーズ(ロッテ対中日)のように、終盤熱戦が続くと20%以上の高視聴率を記録。野球人気は健在である。
 それでも、どこかプロ野球人気は低迷……と思っている人が少なくないのは、ひょっとして斎藤投手(やゴルフの石川遼選手)のようなスポーツ界の優等生的ニューヒーローが、過去のON(王貞治や長嶋茂雄)のようなヒーロー(高度成長の象徴)とは異なり、高齢者が子どもや孫を見る目線でのヒーロー、つまり高齢化社会の象徴だからかもしれない。


(「損保のなかま」2011年3月1日付より)


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