スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■15 スポーツとは何か

 「スポーツ」という言葉はもちろん外来語。では、日本語に翻訳すると…? と聞かれて、貴方は答えられますか?
 実は明治の日本人も、この問題で大いに悩んだ。何しろ、初期の文献には「スポーツ」が「乗馬」「釣り」などと訳されているのだ。
 馬に乗ったり釣りをしている英米人に、「何をしてる?」と聞くと「スポーツ」という答えが返ってきたのだろう。
 が、「乗馬=○○=釣り」の「○○」に入る日本語がなかなか見つからず、そのうち「アウト・ドア・スポーツ」という英語の本が「戸外遊技法」と訳されたので、スポーツは「遊技」と訳されるようになった。
 とはいえ、陸上競技や水泳競技も、野球やサッカーも、兵隊の肉体訓練に利用されたり、学校の授業で教えられたりするようになると、「スポーツ=遊技」では不都合で、「運動」や「体育」という言葉が使われるようになった。
 現在も「体育の日」(Sports & Health Day)や「国民体育大会」(National Sports Festival)という具合に、「体育=スポーツ」として使われることが多い。
 が、同じように体を鍛えて動かしても、指導者(先生)の命令で行う「体育」(Physical Education)と、自分から行う(自由に止めることもできる)「スポーツ」は、まったく意味が違う。
 我々日本人は、この「誤解」に今も縛られているようで、アジア大会で、ボウリング、ダンス、囲碁、ビリヤードなどが正式競技、オリンピックでもチェス、ダーツ、ブリッジ(トランプゲームの一種)などが正式競技に立候補…などと聞くと「なぜ?」と驚く人が多い。
 が、国際大会で「競技」と訳されている元の言葉は「スポーツ」なのだ。それは「遊技」と訳されたこともあったのですよ。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2011年6月1日付より)


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