スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■16 5年後の岩手国体をどうする? 復興と国体の両立は?

 4月下旬、岩手県の達増拓也知事が、震災からの復興事業を優先するため、2016年に予定されていた国民体育大会(いわて国体)の開催を辞退する意向を表明した。
 そして今年度の一般予算に計上されていた選手強化費用(1億8400万円)も復興費に充てる方針を打ち出した。
 これに対して日本体育協会の国体関係者は「復興で大変な事情は理解できるが、規模縮小、分散大会などで開催に協力したい」としている。

 国体は今年の山口大会以降、岐阜、東京、長崎、和歌山と、5年間の開催地が正式に決定されている。そして、その先5年間の開催地も、岩手、愛媛、福井、茨城、鹿児島に「内定」している。
 その開催地は「西」「中」「東」と順に移動しており、岩手(東)が開催を辞退すると(東の)5年後の代替地を今から見つけることも、同じ被災地の茨城を繰り上げることも難しく、体協や国体関係者は、何とか岩手開催を模索しているようだ。

 そのスポーツ関係者の気持ちは分からないでもなく、全国から多くの人々が集まる国体の開催が復興の一助になれば……とも思う。が、開催すれば総費用が約120億円。どんなに節約しても現時点では、その費用をスポーツに投じて経済効果を呼ぶという考えはやはり非現実的で、その費用はやはり復興事業に直接使われるべきとも思える。

 ともかく、この件はやはり現地被災地の岩手県の判断を最優先すべきだろう。
 そして、もしも開催辞退が正式決定すれば、その年の国体開催は見送り、国民体育大会の意義、スポーツと震災……といったテーマで全国的シンポジウムや討論会を開催するのはどうか? 
 費用も安く、人も大勢集まり、スポーツや国体の存在意義を考え直すきっかけにもなりますよ……。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2011年7月1日付より)


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