スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■18 なでしこジャパンとクーベルタン男爵

 サッカーの日本代表「なでしこジャパン」がワールドカップで優勝し、世界一に輝いた。しかも過去8度戦って一度も勝てなかったドイツ(3大会連続優勝を狙っていた優勝候補)を準々決勝の延長戦で倒す大金星のうえ、過去23回戦って、これまた一度も勝てなかったアメリカと決勝で対戦、2度リードされても追いつき、PK戦で優勝を決めた。
 その粘り強い精神力も見事なら、体格差を技術力でカバーした試合内容も素晴らしく、世界から日本の男子サッカー以上の高評価を得た。

 日本に限らず女子サッカーは男子に比べて世界的に歴史が浅い。それは足でボールを扱うことが「女性的でない」との考え方が、洋の東西を問わず支配的だったからで、19世紀初頭には「フットボール」に代わる女性用の「ハンドボール」が生まれた。
 そのハンドボールは、男性にとっても面白いスポーツとして、男女ともに発展したが、「サッカーは男性に限る」という「常識」を打ち破ることはなかなかできず、サッカー発祥国のイングランドでも、正式に女子サッカーの団体が認められたのは1970年代。第1回女子サッカーW杯(優勝はアメリカ)が開催されたのも1991年のことだった。

 現在ではオリンピックでも「スポーツにおける男女平等」が主張され、レスリング、ボクシング、棒高跳び、三段跳び…等の「男性的競技」にも女性の参加が常識となった。
 近代五輪の創設者であるクーベルタン男爵は「スポーツは男性のもの。女性は優勝者に栄冠を与えるのが仕事」と主張していた「男性スポーツ中心論者」だった。
 しかし、女子W杯での「なでしこ」たちの素晴らしい大活躍を見ることができたなら、そんな古い考えなど直ちに改めたことだろう。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2011年9月1日付より)


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