スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■25 東京五輪招致のチャンスだが…

 以前にも書いたが、私は東京都のオリンピック招致に賛成だ。2020年東京五輪開催を弾みにして、スポーツ庁新設や日本のスポーツ界再編、スポーツによる東北の被災地復興が成し遂げられ、最近元気のない日本に、明るさを取り戻したいと考えている。

 そんな折、ローマが五輪招致の断念を発表した。理由はイタリアの深刻な財政危機。ユーロ危機を招いたギリシャの財政破綻は、04年のアテネ五輪開催で、1兆円以上支出したことが引き金になったともいわれている。

 東京の場合、16年の招致を目指したとき以来の五輪開催基金の積み立てが4千億円以上あり、それにプラスして民間から同程度の金額を調達する予定で、国や都の財政に悪影響を与えないという。
 ならば、とりあえずは安心といえるが、福島の原発事故の推移とともに、常に財政や景気の動向も見守り、五輪開催が国民や都民にとってマイナスに働くと分かれば、その時点で即座に招致を断念する勇気を持つべきだろう。

 ローマの招致断念で東京は有利になり、ライバルは経済成長著しいトルコのイスタンブールだけ、と喜ぶ声もある。
 22年にサッカーW杯を開催するカタールの首都ドーハも、オイルマネーを背景に立候補した強敵だが、06年アジア大会と同様、猛暑の夏を避けた12月開催が欧米のテレビ局に忌避されているという。
 ほかにマドリードは、国家が財政危機の真っ只中。
 アゼルバイジャンの首都バクーは国際的な大イベントを開催するには経験不足。となると東京に大きな可能性が…。
 しかし、国民も都民も被災地もメディアも、盛りあがらない。来年9月の開催地決定直前になって騒ぐだけでは、スポーツ界にも被災地にも何の役にも立たないと思うのだが…。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2012年4月1日付より)


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