スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■34 外交手腕が決める東京五輪

 「神風が吹いてきた」
 これは東京都庁某幹部が口にした言葉。
 シリア内戦が長期化し、隣国トルコへも飛び火。おまけにスペインは財政危機で暴動に近いデモが頻発。そこで2020年のオリンピック招致に立候補している東京にとっては、ライバル都市である両国首都(イスタンブールとマドリード)の混乱が大いに有利に働く、という見通しだ。

 他国の混乱を「神風」と喜ぶ言葉が適切か否かはさておき、福島の原発事故処理という大きなマイナス要因を抱える日本の首都も、これで同じスタートラインに立てた(リードした?)ことは確か。
 しかも2024年は五輪創設者クーベルタン男爵の故郷フランス(パリ)での3度目の開催(2度目の開催から100周年記念)が有力とされている。ならば同じ欧州での2大会連続となるマドリードの脱落は火を見るより明らか。東京とイスタンブールの一騎打ちとなったことは間違いない。

 1964年の東京オリンピック開催が決定したのは59年5月のIOC総会。
 日本は第2次大戦敗戦後、52年にサンフランシスコ講和条約を締結。そして60年開催の五輪に立候補したが、55年のIOC総会でローマに敗退。翌56年日ソ共同宣言、同年12月国連加盟と、改めて国際社会への復帰を順々に果たした後、IOC委員の所属する各国の大使に当時の岸信介首相の親書を持たせ、戦後平和外交と同時に五輪招致運動を展開。
 ロサンゼルスでスーパー経営に成功した日系米人フレッド和田も、一民間人として私費で南米各国を回り、五輪招致の票固めに尽力した。
 さて、諸党乱立の中から選ばれた新総理は、どんな「新しい外交」で、あと一息で実現する《夢》を手繰り寄せてくれるのだろうか?

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2013年1月1日付より)


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