スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■41 高校野球の狂気の沙汰

 日本の野球界はナンセンスな事件だらけ。前回本欄で取り上げたプロ野球の「飛ぶボール問題」も、あきれ返る事件だったが、高校野球でも、実にバカバカしい事態が起きた。
 いや「バカバカしい」とは言えない。これは人が死ぬ可能性があるほどの事態なのだ。

 埼玉県熊谷市で38・8度の猛暑を記録した7月11日に、高校野球予選の行われた同県川越市初雁球場で、マウンド上でうずくまったエースをはじめ、3人の選手が熱中症で途中交代した。
 同県さいたま市営浦和球場でも、応援に来た生徒5人が熱中症で倒れ、さいたま市川通公園野球場でも選手1人と応援の生徒1人が、救急車で搬送された。

 日本体育協会は、気温35度以上の野外でのスポーツを原則的に行わないよう指導している。にもかかわらず気温38・8度の(直射日光下のグラウンドではおそらく40度を超えていた)炎天下で、野球をやらせることが間違っている??と言う以上に、狂気の沙汰と言うほかない。
 ところが、報道によると、この「事態」に対して、当該の野球部監督は、《「試合で倒れるなんて初めてです。何をやっているのか」とあきれ顔だった》と、まるで生徒に責任があるかのようなコメントを口にしたという。
 また、埼玉県高野連関係者も、「ちょうど期末試験が終わり、体が慣れていないんじゃないかな。対策を考えないと。毎日これでは困る」と語ったというのだ。

 そもそも試験の時期に、しかも猛暑の季節に、野球の試合をやることがナンセンス。これほどの「狂気」に非難の声が湧かないのは、プロ野球同様、大マスコミが主催者だから?
 犠牲者が出たとき、主催者は何と言うのだろう?

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2013年9月1日付より)


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