スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■42 東京五輪招致と日本の外交力

 この原稿を書いているのは8月下旬。まだ2020年のオリンピック開催地は決まっていない。そして皆さんが原稿を読むのは9月7日のIOC(国際オリンピック委員会)総会の後。既に開催地は決定している。
 果たして東京開催はどうなったか。まったく予想できないが、8月下旬の時点では、マドリードが大逆転攻勢で一気に当確圏内に浮上したという情報が飛び交っている。

 当初は、2024年五輪のパリ開催が濃厚なため(1924年パリ大会から100周年にあたる)、マドリードはパリと近過ぎて不利とか、スペインの国家財政危機で経済的に開催不可能といわれていた。が、ヨット競技で五輪出場経験もあるフェリペ皇太子の王室外交が功を奏し、IOC委員の集票に成功しているらしい。
 もちろん、それは表向きの事情で、裏ではEU(欧州連合)が動いたとか。つまりスペインの財政危機はユーロの危機であり、アテネ五輪の財政支出がギリシャの経済破綻の引き金を引いたのとは逆に、「EU全体でマドリード五輪を成功させ、スペイン経済を立て直そう」というのである。
 これに対してイスタンブールは、トルコ全体の反政府デモがマイナス点。東京も東京電力福島第一原発の汚染水の問題がヨーロッパや諸外国で日本以上に報道され、評価が下がっているというのだ。

 もちろん結果は、どう転ぶかこの時点では分からない。が、東京五輪招致関係者の最後の「票読み」では、マドリード38票、東京35票、イスタンブール25票だったとか。そして決選投票となり、マドリードと東京がイスタンブールの票を奪い合って開催地の決定となる…ということだった。この「票読み」が日本の現在の「外交力」を示すものであったとは言えるのだが…。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2013年10月1日付より)


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