スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■44 日本プロ野球界の異常性

 侍ジャパン(プロ野球日本代表チーム)は台湾との強化試合に臨んで3連勝。幸先よいスタートを切ったわけだが、チームの監督が小久保裕紀氏に決まった経緯が不透明だ。これは不思議な話だ。

 小久保監督に反対するつもりはない。監督経験はないが、ソフトバンクや巨人で活躍したときも多くの選手に慕われたというから、リーダーシップには期待したいと思う。
 が、彼を監督に決めたのは、いったい誰なのか? 

 NPB(日本野球機構)コミッショナーの加藤良三氏は、「飛ぶボール問題」で9月下旬に辞任を表明。代行にオリックス球団の宮内義彦オーナーが就任したが、10月上旬に開かれた小久保氏の監督就任会見には出席しなかった。
 さらに不思議なことに、誰が監督を決めたかについて、記者会見に出席した記者が一人も質問しなかった。だから「NPBが小久保監督に決定……」と、ワケのわからない報道をしたスポーツ紙もあった。

 プロ野球界では、重要な案件が万事このようにして無責任のうちに決まるのだ。
 加藤良三氏をコミッショナーにしたのは誰なのか? クライマックスシリーズなどというペナントレースの優勝を否定するような短期決戦を仕組んだのは誰なのか?(今年は両リーグとも、無事にリーグ優勝チーム同士が日本シリーズに進んだが……)
 そもそも社会人野球や大学・高校野球とプロ野球が別組織だというのも、「スポーツ組織」としてはあり得ない異常な形態だ。しかも、この形態を、ジャーナリズムを担うべきマスメディアが推進している。

 日本の野球界はスポーツ庁ができる機会に、この異常な形態を改めて、メディアから離れた一つの組織に統合しなければならないはずだが……。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2013年12月1日付より)


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