スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■46 東京招致に有利に働いた「不安」

 「オリンピックが成功のうちに幕を閉じるまでは、クリスマスも正月休暇もナシだ」

 昨年11月下旬、ソチ冬季五輪の会場建設や周辺整備が遅れに遅れていることを知ったロシアのプーチン大統領は、工事担当者に対してそんなげきを飛ばしたという。
 何しろ開幕まで2カ月に迫った年末になってもメイン・スタジアムは工事中。スキー会場は雪がまったく降らない状態。果たして五輪がマトモに開幕できるのか、心配する声が飛んでいるという。

 一方、6月に開幕するサッカーW杯ブラジル大会でも、建設工事中のスタジアムの屋根が数度にわたって崩落し、死者まで出す状況。昨年末に全ての会場が完成の予定だったが、開幕直前までずれ込んだとか。また2年後に迫ったリオデジャネイロ五輪も、準備状況は芳しくないらしい。

 実は、このような「不安」が、2020年東京五輪招致に有利に働いた。昨年9月上旬に行われた、ブエノスアイレスでのIOC(国際オリンピック委員会)総会に出席したIOC委員の多くは、距離の近いリオデジャネイロに立ち寄り、準備状況の芳しくないことを肌で感じた。そして不安を覚えた委員の多くが、次回五輪は開催経験のある(しかも生真面目な国民性が定評の)日本の東京に……と判断したという。

 ところが、五輪招致に尽力した猪瀬東京都知事が辞任。このニュースはIOC委員を大いに驚かせた。何しろオリンピックとパラリンピックの組織委員会は、開催決定から5カ月以内(2月7日まで)に組織するというIOCとの契約になっている。そのときに開催都市のトップが存在しないのは前代未聞。
 世界の期待に応えて五輪を成功させるため、スポーツに精通した新しい都知事(リーダー)の早期就任が望まれる。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2014年2月1日付より)


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