スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■47 五輪は国際政治を映し出す鏡

 この原稿が掲載されるときは、ソチ冬季五輪は閉幕している。果たしてどんな雪と氷の祭典が繰り広げられたのだろうか……。

 小生は、フィギュアスケートだけでも男女団体合わせて3〜5個、男女のジャンプで3個、スピードスケートで3個、ノルディック複合やスノーボードなど、合計18個のメダル獲得が日本に期待できる、との予想だった。W杯や世界選手権で表彰台に立った経験を持つ選手が少なくないので、最低でも長野大会の合計10個を上回るメダルをと期待したのだが、果たして結果は?

 が、オリンピックに関連して大きな心配は、ロシアの政治情勢だ。
 黒海沿岸の都市ソチに近いカフカス地方は文化、言語、歴史、伝統、宗教が異なる民族が数多く混在し、ロシア内外の共和国や自治州がひしめいている。 ロシアからの独立を求めるチェチェン共和国や、ロシアと対立するグルジア、ロシア内の北オセチア共和国と合体してグルジアからの独立を目指す南オセチア共和国、ロシアに対するゲリラの拠点となっているダゲスタン共和国などだ。
 ロシアはソチ五輪を成功させて、紛争地域での強い支配力を内外に示したいところだったろう。
 が、反ロシア勢力は五輪開催阻止を主張。開幕直前までソチ周辺で自爆テロが繰り返された。
 そんな中、ソチ五輪はどのように開催されたのだろうか?

 古代ギリシャでは、五輪の原型である「オリンポスの祭典」の開催期間中に全ての戦争や紛争が中止された。
 近代五輪はスポーツの祭典であるにもかかわらず、どの大会も国際政治の現状を映し出す鏡になってしまっている。
 古代の「英知」と肩を並べられるようになるのは、いつのことだろう?

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2014年3月1日付より)


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