■49 「新国立競技場」建設への不安
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「8万人収容の競技場は巨大過ぎる」「五輪が終わると使い道がない」「UFOのような奇抜なデザインが閑静な神宮の森にマッチしない」「当初の予算の1300億円でも高額過ぎるのに、さらに費用がかかる」——。 新国立競技場が2019年のラグビーW杯や翌年の東京五輪での利用を目的として建設されることに、こうした批判の声が渦巻いている。 が、小生は、イラク人の女性建築家ザハ・ハディド氏の斬新な設計による巨大な建築物を支持していた。それは新時代を切り開く東京を象徴する未来型建築物にふさわしいと思えたのだ。 しかし『新潮45』4月号に掲載されていた森山高至氏(建築家・建築エコノミスト)のリポート『「新国立競技場」に断固反対する』を読んで、小生の夢と信念は今脆くも崩れかかっている。 森山氏は多くの「反対理由」を挙げているが、小生の胸にグサリと突き刺さったのは、設計通りには建設できないという指摘だ。 既に予算の関係でデザインの一部変更が行われ、「デザインの価値を半減させてしまっている」上、そもそもこのデザインの建築物が建設可能かどうか、大いに怪しまれる。これは「陸上に建設しようとする巨大な橋梁」のため、「部材の運送」や「現地での吊り上げ」「敷地の周囲にそのような余地はあるのか」「交通網や周辺への影響」などといった「課題が山積み」なのだ。 しかも「実際の設計図も出来ておらず」「フォルムやデザインのみを(略)募集した」コンペのやり方は、応募資格や審査員の人選も首を傾げるほかなく、審査委員長の安藤忠雄氏は審査内容について一切取材に応じないという。 こんな秘密主義で選ばれた設計の新国立競技場は本当に建設できるのか? (スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数) |
(「損保のなかま」2014年5月1日付より)
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