スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■60 インタビューの要諦とは

 2月某日、某テレビ局の女子アナが、日本ハム・ファイターズの大谷翔平選手にインタビューをしているのを聞いて、私は思わず、「あ〜あ……」とため息をついてしまった。
 「ピッチャーとバッター、一つに絞るなら、本当は、どっちをやりたいですか?」
 答えは聞かなくてわかる。
 「どっちもやり続けたいです」
これは最低のインタビューだ。

 一方、大阪のバラエティー番組に出演している漫才師トミーズの雅さんは、さすがに元ボクサーのスポーツ好きだけあって、某テレビ番組で大谷選手相手に、こう質問をした。
 「決め球でスカッと三振を取ったときと、サヨナラホームランをガーンと打ったとき、どっちが気持ちいい?」
訊かれた大谷選手は苦笑いを噛み殺しながら、「ううううん…」と考え込んでしまった。
 その表情を見ていると、彼が本当にピッチングもバッティングも好きで、一つに絞れないことがよくわかった。
 これがインタビューというものだろう。  「Inter…view」とは「(心の)中を…(覗き)見る」こと。相手が心の中を思わず吐露するような質問をしなければならない。

 私が、まだ駆け出しのスポーツライターだった頃、大先輩の某ノンフィクション作家に、こう言われたことがある。
 「ヒーロー・インタビューで、この喜びを誰に伝えたいですか?なんて馬鹿な質問をする奴がいる。そんなことは訊かなくても調べりゃわかる。どうせ質問するなら、『この歓びを誰にだけは伝えたくないですか?』と相手の本音に迫るひねった質問をしろ」
この言葉を座右の銘にした。だから「長嶋さんは空振り三振する姿も美しかったですね」
 「そりゃあ、カッコイイ空振りを鏡の前で何度も練習しましたから」
 なんて面白いインタビューもできたのだった。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2015年4月1日付より)


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