スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■64 新国立競技場建設は改められるか

 新国立競技場の建設を巡って、否定的な意見、建設に反対する意見が噴出していた。
 2520億円といわれる建設費は高額すぎる(北京五輪で「鳥の巣」と呼ばれたスタジアムでも600億円程度)が、実際は3000億円以上かかると言う建築家もいる。
 そもそも長さ370メートル、重さ2本で約2万トンのアーチを、天井の上に乗せる構造は建設不可能ともいわれ、建物が巨大すぎて地下駐車場への道路を作る余地がないとか、8万人の観客を導く周囲のスペースがなく、大混雑するとか……。
 しかし何といっても決定的なのは、基本的に陸上競技場という施設のはずなのに、練習用のサブトラックが存在しないことだ。五輪用には仮設で外に作られるというが、五輪が終わると取り壊される。そのくせ五輪後には世界陸上選手権の招致や、年に10回程度の陸上競技大会が予定されている。その都度サブトラックが仮設で建設されるのか?
 それ以外にも完成後の利用計画は杜撰(ずさん)と言うほかなく、毎月1回(年12回)の8万人規模のコンサートを50年間続ける計画や、年に20試合のサッカー、5試合のラグビーなどで、年間35億円という維持費を稼ぎ出すという。
 ハッキリ言ってそんな計画が「絵に描いた餅」でしかないことは、誰の目にも明らかだ。しかも屋根の下に戦艦大和がスッポリと収まるほどの、この巨大スタジアムの維持費は年に70億円以上かかるとの試算もある。
 そのうえ愕然とするのは、この新競技場建設を推進している人達の誰一人として(文科大臣も五輪組織委員長も)「このスタジアムはこんなに素晴らしい!」ということを説明してくれない。
 こんな無用の長物の建設は将来に禍根を残すだけ。ストップがかかってとりあえず一歩前進か?

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2015年8月1日付より)


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