スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■67 ギャンブルは刑法で禁じるほどの悪なのか?

 巨人の2選手が野球賭博を行う、という極めて深刻な事件が起きてしまった。
 プロ・アマを問わず、野球選手が野球賭博に手を出すのはもってのほか。事の重大さに対する本人の無自覚さには呆れるほかないが、球界及び球団の教育が十分だったか、検証し直してほしい。
 選手たちは、某人物に誘われて高校野球やメジャーの試合の勝敗に金銭を賭け始め、やがてプロ野球の自分が所属するチームの試合の勝敗にも賭けるようになったという。そこから自分の出場(登板)する試合にも賭け、自分が賭に勝つようにする……つまり八百長に進むようになるのは、かつての「黒い霧事件」同様、一つのパターンと言える。
 2選手に対して球団は謹慎処分を申し渡したが、まったく甘い処分である。球界としては、すべての経緯を詳しく調査した上で、球界からの永久追放処分も含む厳罰で対処してほしいものだ。

 それとは別に、日本では賭博を刑法で禁止している。そのことについては、そろそろ考え直すときかもしれない。
 イギリスでは1960年に「賭博解禁法」を施行。あらゆる賭博行為を解禁した。以来、スポーツの勝敗も王室の赤ん坊の名前も、民間のブックメーカー(賭け屋)によって賭けの対象とされるようになり、今では欧米の先進諸国では、賭博は「悪」と見なされず、一定のルールの下で自由に娯楽として行われ、その利益の一部が賭博依存症の人々の治療に当てられたりもしている。
 かつてアメリカに禁酒法が存在したときはギャングが密造酒や密輸酒で大儲けした。現在日本で(公営以外の)賭博が刑法で禁止されている結果、ヤクザなどの反社会的集団が大儲けしている、とも言えるのだ。日本でギャンブル解禁法が生まれるのはいつ?

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2015年12月1日付より)


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