スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■69 新国立競技場めぐる森氏の「失言」

 オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元総理が、またまた失態を犯した。
 新国立競技場の二つの新しい計画案が発表された12月14日、感想を聞かれて、「僕らにとっては外のデザインよりは中身。どっちがいいと言うより、中身がどうなっているか……」と答え、ココまでは良かったのだが、そのあと外観への印象を訊かれると、「外側だけを見るとB案の方がいかにもスポーツという雰囲気が出ている。ギリシャの神殿みたいだ」と一方を持ちあげ、A案については、「大会をやっているという明るさがない」と切り捨てた。
 これは審査を前にした組織委会長の言葉とは言えない。総理時代から失言が多く「鮫の脳味噌」などと揶揄する声も聞かれたが、まさに絶対に口にしてはならない失言だ。
 しかもA案・B案と設計者や施工ゼネコンを隠し、それが判る部分は黒塗りにして公表されたが、一部に消し忘れと思われる箇所があり、A案が隈研吾氏設計で梓設計と大成建設、B案が日本設計と竹中工務店、清水建設、大林組と、簡単にバレてしまった。
 さらにある情報によると隈氏は事前に森会長に「挨拶」に赴き、大成建設は旧国立競技場を建設した実績もあり、ほぼ「隈&大成」で決定と囁く声もあった。その反対の意見を森会長が口にすることによって、「公平な決定」をアピールすることができ、そのための「失言」と言う人までいる。
 真相はわからない。が、こんな裏の声が飛び交う事態を招いただけでも森元総理は組織委会長を辞任すべきで、本人も10月16日付の毎日新聞で「私の役割はあと3年」と五輪前の辞任を語っている。が、過去にエンブレム問題等もあり、今回の失言を考えれば、日本と五輪のために今すぐ辞めるべきだろう。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2016年2月1日付より)


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