スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■70 東京五輪運営費1兆8千億円はホント?

 昨年12月、2020年東京五輪・パラリンピックの運営費用だけで1兆8千億円(!)という報道があった。
 大会を招致した当初は約3千億円とされていたのが6倍に膨れあがった上、収入見通しは4千5百億円しかなく、約1兆円は国や東京都の税金で賄うほかないという。
 おまけに森喜朗大会組織委会長は「最終的に2兆円を超すかも」などと発言。ロンドン大会も2兆円を超した……ソチ冬季五輪は5兆円……との報道もあった。
 が、それらの大会費用は鉄道や道路など、都市のインフラ整備の費用も含めて。東京はテロ対策費や高速道路の専用レーン使用料など、インフラとしてカタチに残らない費用だけで1兆8千億というのだから唖然とするほかない。
 最初の新国立競技場の建設費が2520億円で高すぎると白紙撤回されたのに、その何倍もの税金が、カタチにも(心にも!)残らないものに投入されようとしているのだ。
 1984年のロサンゼルス五輪では、ユベロスという42歳の辣腕経営者が組織委会長として登場し、税金を使わないという約束を守って「民営化五輪」を実施。2億ドル以上の黒字まで計上した。
 そのポイントは、収入が多かったからではなく、支出を切り詰めたから。ロス五輪収入は約7億5千万ドル。前回のモスクワ大会の約11億3千万ドルよりかなり少なかったが、支出は5億3千万ドルで、モスクワの約13億ドルよりぐっと節約したことが「成功」につながったのだった。
 2020年東京大会もゴルフ会場を埼玉の山奥のプライベートコースから東京湾岸にあるパブリックコースに移すなど、まだまだ節約できることがあるはず。それが組織委会長の腕の見せどころと言えるはずだが……。

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2016年3月1日付より)


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