スポーツ博覧会
スポーツ・ライター 玉木正之


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 ■74 東京五輪は開催できるのか?

 2020東京五輪の招致活動で、東京の招致委員会が「賄賂」を使ったのではないか、という疑惑が表面化した。
東京五輪開催が決定した13年9月のIOC(国際オリンピック委員会)総会の前後(7月と10月)に、招致委が2億3千万円もの巨額のカネをシンガポールの某社に振り込んだのだ。某社の代表が、当時のIOC委員でアフリカ大陸の12人のIOC委員に強い影響力を持つ国際陸上競技連盟のラミン・ディアク会長の息子のパパマッサタ・ディアク氏と親密な関係で、フランスの捜査当局は、このカネが東京への投票の取りまとめを依頼した「賄賂」の疑いが濃厚として捜査を開始した。
このカネの動きは、もともとロシアのドーピングの隠蔽(いんぺい)工作に関わったとしてラミン氏が逮捕され、パパマッサタ氏も国際刑事警察機構に指名手配されるという捜査の経緯から発覚。東京の招致委理事長だった竹田恒和JOC会長は「正当なコンサルタント業務契約の対価」と「正当性」を主張。それが認められるか否かは捜査の行方を見守るほかない。
過去の五輪開催地決定の多くが賄賂や不正を伴っていたのも事実。02年ソルトレイク冬季五輪は招致に5億円の賄賂が飛び交い、6人のIOC委員が追放された。それは98年長野大会の招致活動を真似たとも言われ、そのとき長野はサマランチIOC会長(当時)に1千万円相当の日本刀を贈ったり、堤義明JOC会長(同)がオーナーのプリンス・ホテルは、サマランチ氏所有のワイナリーのワインの購入契約を結んだり…。
過去の開催地決定もさまざまな問題があったが、20年東京五輪は、国立競技場・エンブレム・運営費高騰……そして「賄賂」と呆れるほどの失態続き。
はたして成功裏に開催することはできるのか?

(スポーツライター・音楽評論家。国士舘大学体育学部大学院非常勤講師。著書多数)


(「損保のなかま」2016年7月1日付より)


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