|
日本プロ野球ファンの中で、巨人ファンが多数派・第一党であることは国民の直感的な共通認識であろう。本論はその巨人ファンの形成プロセスや特性に関して「調査」データから興味深い事実を示し、説明を試みようというものである。まず多数派巨人ファンの実態分析からはじめよう。
「調査」における巨人支持率は約24%であった。これはあるマスコミの調査(01年度)による「二十代の巨人支持率」とほぼ同数値で、マスコミ調査による全年齢平均支持率35%と、「調査」対象学生の父母の巨人支持率34%もほとんど重なる。つまり、全国民的には三人に一人が巨人ファンだが、若い世代の巨人ファンは四人に一人、一世代の間に巨人支持率は大体10%ほど低下していることになる。巨人ファンの第一の特徴は「老齢化」である。 また、巨人支持率は地域によってはっきりした傾向がある。人口密度と支持率がほぼ反比例するのである。町村では高く、市部から大都市に向かって次第に支持率は低くなる。その差は10ポイントを遥かに超える。巨人ファンの第二の特徴は「地方型」である。 さて、「調査」で、好きなスポーツを聞いたところ、巨人ファンの一位は「野球」だったが、その他球団ファンは第一位にサッカーを挙げた。巨人ファンの第三の特徴は「どのチームのファンより熱心な野球ファンである」ことだ。 さて、巨人ファンがなぜ地方型か、について分析をしておこう。二つの説明軸が考えられる。一つは都市に対する日本人の外側からの憧憬心理である。日本において「都」は昔から政治・文化の中心地であり、若者が地方から眺める都市はさまざまな可能性やチャンスに恵まれると思える魅力的な場所であった。巨人はそういった憧れとしての都市のシンボルなのである。 しかし、地方の人々にとって憧れの対象である巨人は、大都市・東京人の目には違ったものとして映る。 それは「都市の構造原理」から説明できる。都市では人と人の結びつきは役割と役割のそれであって全面的・全人格的なものとはなりにくい。つまり、都市における人間関係はゲマインシャフト的ではなくゲゼルシャフト的なものに特徴づけられている。大都市・東京は既に共同体ではなく、故に巨人はそのシンボルとはなり得ないのである。ここが中日や広島など、地域色豊かなファン(阪神ファンについては後述)との違いであり、巨人ファンが東京に少なく地方に多い理由でもある。 なお、マスコミ調査によると、巨人ファンが多い代表的地域は北海道、東北、九州などとなっている。 (「損保のなかま」2002年4月1日号より転載) |