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「調査」による家庭環境の特徴の一つは、巨人ファンには兄弟姉妹が少ないという事実であった。そこから次のようなことが考えられる。つまり兄弟姉妹が多ければ、さまざまな面で自己の立場の相対性が増す。そのことは多様・多元的な思考をより多く育成するという仮説である。巨人ファンは他球団ファンに比べ、そのような環境で育っていないのである。 もう一つは、家庭内における巨人ファンの有無である。巨人ファンを止めたグループに限って家庭環境を調べてみると、その三分の二の人々には「家庭内に巨人ファンがいなかった」という事実がある。 対照的に、他球団ファンを止めて巨人ファンになったという人の場合を調べてみると、その全ての人に「家庭内に巨人ファンがいた」のである。 そして、巨人ファンの巨人への忠誠・支持の固さに関する、もっとも基本的な説明は、巨人ファンは主として幼少・児童期に作られ、パーソナリティのハード・コアに近いところで巨人ファンであることをしっかりと自己の内部に取り込んでいるということである。つまり巨人ファンであることは体質的なものに近いのである。巨人ファンの支持の固さはここが基点なのであって、そのことは本論全体を構成する核心の一つである。 それに関連するデータを一つ示しておこう。巨人ファンであることが幼少・児童期に既に作られているとすれば、後天的に得られる社会的地位、職業的威信とは関係ないということになるはずである。たとえば企業トップに巨人ファンが多いという俗説は否定されなければならない。 ある夕刊紙に「社長の私生活」という連載欄がある。そこでは社長さんの支持球団が取材されている。筆者が二年間にわたってその紙面を追跡調査・分析した結果、社長さんの巨人支持率は36%であった。これは、先述の全国紙による調査結果=国民全体の巨人支持率とピッタリ符合する。すなわち、巨人支持者は職業や社会的地位とは関係ない。やはり、巨人ファンになるキーは幼少・児童期と家庭環境である。 (「損保のなかま」2003年1月1日号より転載) |