巨人ファンが持つホンネとタテマエ |
今月から、巨人ファンの社会的態度を分析する。手始めは「プロ野球界」への態度である。 日本プロ野球界の基本構造は、いうまでもなく「巨人中心主義的秩序」である。それについては、少し長くなるが作家でありスポーツ評論家の玉木正之の論を聞こう。 「ジャイアンツは、親会社であるマスメディアによる優先的報道や優先的実況中継によって、全国的な人気を作り出し、興行面での黒字と有力選手の獲得という点で、他の球団の追随が不可能なほどの独占的利益を得てきた。そしてメディアによって常勝巨人という虚構も流布させた。それは野球を行う条件が平等でない異常な組織で、勝利を独占するための謬論といわねばならない」(同、「スポーツとは何か」、講談社現代新書)。
玉木の指摘はまさに正論である。これに対する情緒的な反発はあっても、巨人ファンサイドは有力な論理的な反論をもたない。巨人ファンとてタテマエとしてはこの正論を認めざるを得ない。だが、ホンネは違う。それが「調査」には明確にあらわれている。 巨人中心主義的秩序への態度測定を目的として、「調査」では単刀直入に「プロ野球の魅力は強豪球団が存在するからだという意見に賛成か・反対か」と聞いた。結果は、 巨人ファンの63%が賛成(反対11%) 他球団ファンでは36%が賛成(反対44%)であった。 巨人ファンはホンネのところで、プロ野球界はあくまで巨人が中心であると考えている。これは、「現行の特定球団に有利と言われるドラフト・FA制度に賛成か・反対か」という質問に対する回答、 巨人ファンの67%が賛成(反対7%) 他球団ファンでは29%が賛成(反対18%)と同様の質をもっている。 さて、ここからが問題なのである。巨人ファンには、タテマエとホンネの間に葛藤(社会学的にいえば「認知不協和」)があるはずである。巨人ファンはそれをどのような方法で解決しているのか。次号で一つの仮説を提示しながらそのことに迫ってみたい。 (「損保のなかま」2003年6月1日号より転載) |