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 ■18…巨人ファンの社会・人生観
   巨人ファンは真理や正義よりお金志向

 巨人ファンのプロ野球を見る立場は、現実に即した視点からである、と先述した。つまりスポーツだから公平さが必要だとか、合理的なルールが確立されなければならないという他球団ファンとはやや異なった野球観を持っているというのが、筆者の仮説である。だとすれば、巨人ファンの人生観も社会観にもそのことが表れるはずである。

 調査では「あなたにとって、人生で最も価値あるものは何ですか」と質問した。回答の選択肢は「お金」「権力」「愛情」「真理」「正義」の五つである。巨人ファンと他球団ファンの間で、くっきりと違いが現れたのが「お金」「正義」「真理」に対する評価であった。

 巨人ファンのなかで「お金」を人生で最も価値あるものと見る人は15%もいる。しかし、他球団ファンにおいては、5%の人しかそう考えていない。
 「正義」については他球団ファンはその12%の人が「人生で価値あるもの」と答えているが、巨人ファンにおいてはわずか3%の人しかそう答えない。
 「真理」も同傾向を示している。他球団ファンは15%の人が「人生で最も価値あるもの」と答えるが、巨人ファンは4%しかそう考えていない。
 「正義」「真理」を合わせて、他球団ファンは30%近くの人がこれを重視しているが巨人ファンは7%に過ぎない。両者の人生観、社会観は極めて明瞭に異なっている。巨人ファンは「真理」とか「正義」という理想主義を拒否し、「お金」「権力」といった現実的な価値に目を向ける。

 さらに「調査」は「望んでいる生き方」を質問した。質問事項は「その日その日を自由に楽しく過ごす」「身近な人と和やかに毎日を過ごす」「計画を立て豊かな人生を築く」「みんなと力を合わせて世の中を良くする」「その他」である。人々の生活信条の根底には、二つの価値選択の軸がある。すなわち、現在の感情のままに身を任せるのか、それとも未来の結果を熟慮してそれを抑えるのか、という時間的な見通しの軸と、自分の利害のおもむくままに行動するのか、他人への影響を熟慮してそれを抑えるのか、という社会的な見通しの軸だ。質問はその二つの軸を組み合わせて四つの価値類型を提示した。

 ここでも巨人ファンは「現実的な価値観」に他球団ファンのほぼ二倍の回答をしている。巨人ファンの40%が「その日その日を自由に楽しく過ご」したいと思っているのである。

(「損保のなかま」2003年9月1日号より転載)


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