現状肯定、社会的満足度高い巨人ファン |
巨人ファンの社会的態度について、数回に亘って記述してきた。先月は、主に政党支持と巨人ファンの関係、とりわけ自民党支持者の半数は巨人ファンであることなどを示してきた。
そして、巨人ファンの比率が減少することと政治や社会への不満度は反比例する。すなわち、自民党支持者でも74%が政治や社会に対する不満を持っているが、自由党支持者では91%、民主党92%、社民党94%、共産党95%と次第に増えていく傾向にある(朝日新聞、00・02)。 「調査」及びこのようなデータから、巨人ファンの態度特性については、他球団ファンより「現実的」「現状肯定的」「社会的満足度が高い」という結論が導かれたのである。 補強的見解を少し挙げておこう。一つはTBSが一九八〇年に行った「好きなプロ野球チームと好きな歌との関連」調査という企画である。ここでは、巨人ファンは「伝統的な人気曲」を好むという指摘がある。たとえば、高齢者なら藤山一郎の「青い山脈」などオーソドックスでけれん味のない「国民的歌謡曲」である。もっとも、伝統的人気曲と現状満足度との関連性は必ずしも明確にされていない。 また、市川孝一(文教大学助教授・当時)は、「論理の飛躍を承知で…短絡的な言い換えだが…巨人ファンは強いもの好きの権威主義的パーソナリティの持ち主ではないか」と、大胆な仮説を提出している(『日本人とプロ野球研究』、プレーン出版)。権威主義的パーソナリティとはドイツの社会学者のアドルノによって概念化されたものである(アドルノ、『権威主義的パーソナリティ』、青木書店)。 これらの仮説は、かならずしも実証的データに裏付けられたものではないが、本「調査」を基礎とする仮説や諸データと矛盾しないものだ。 実は、ここから興味深い次のテーマが生まれている。それは、なぜ巨人ファンが現状肯定的で、体制的であるのかという問いとそれへの解である。 直感的には、本論の中途で示した巨人ファン特有の家庭環境が、それに関わっていると考えられるのであるが、本論ではその点を論じるためのデータも使用すべき理論も準備不足であって、残念ながら解答仮説を示すことはできない。さて、次回は最終章である。 (「損保のなかま」2003年11月1日号より転載) |