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 ■22…日本の多数派モデルとしての巨人ファン
   妻は夫に従い、子は母に同一化して

 終章(まとめ)(2)

 巨人ファンがつくられるのは主として家庭であるが、その家庭が生産する巨人ファンは子どもだけではなかった。巨人ファンと結婚した他球団ファン、あるいは支持球団なしだったパートナーが、やがて巨人ファンとなって夫(妻)に寄り添っていくようになる。

子どもは親と同一化したい…
 そして母親となった妻は、家庭における巨人ファンを結ぶ扇の要の役割を果たすようになる。ともに巨人ファンである父母という家庭構図は、主に、母親の同調努力によって出来上がっている。母は多数派としての父に自らを合わせる。そして、その母への模倣、同一化行動として子どもの巨人ファン化が進む。
 巨人ファンの家庭は母親と父親を軸に団結が固く、かつ、活力に富んでいる。巨人ファンを生み出す母は家庭であり、また、実の母であり父である。とりわけ、母の姿は日本社会における家庭のひとつのモデルである。巨人ファンとは、もっとも日本的な家族を土壌に生まれ育った多数派モデルである。幼少期・児童期に巨人ファンになる場合も、結婚を転機として巨人ファンになる場合も、誕生の舞台はすべて家庭なのである。
 巨人ファンの家庭では縦横に巨人に関する話題が語られる環境が整っている。それによって家族の巨人に対する愛着がいっそう増幅される。

 テレビはけっしてそれ自体巨人ファンをつくるわけではないが、巨人ファンが国民の間で多数派であることを証明しつづける。テレビが伝える巨人の戦いぶりは、家族間のフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションの中でイメージ豊かに語り合われる。巨人のたたかいぶりと勝利は、巨人ファンの家庭が願う人生ドラマのハッピーエンドと重なる。巨人ファンの家庭は、多数派としての自信と幸福感をかみしめる。そこで培われた積極性は巨人ファンに社交性に富んだ社会性を与える。
 また、そのような家庭環境の中で、幼児期または児童期からパーソナリティのハード・コアの部分で巨人ファンであることを内在化した巨人ファンは、ライバル球団に敵愾心を燃やすこともなく、巨人批判は無視して一筋に巨人愛を貫く。巨人に対する忠誠度は高く、一旦巨人ファンになった以上、支持球団を変えることは少ない。(次号最終章)

(「損保のなかま」2004年1月1日号より転載)


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