スポーツに吹く風
スポーツジャーナリスト 泉 准也


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 ■4 マー君と坂本は宿命のライバル

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 日本のプロ野球を背負って立つ頼もしい若者二人にスポットを当ててみたい。つい先ごろ終わった五年目のセ・パ交流戦。

 今年はWBCで活躍した選手の顔も見られるとあって、リーグ戦とは違った盛り上がりをみせた。その中でひと際注目されたのは、WBCの代表にもなったマー君こと楽天の若きエース・田中将大(20)と、巨人の立派なリードオフマンに成長した坂本勇人(20)の二人である。
 交流戦終了時点での成績は、田中が八勝一敗、防御率はダルビッシュとともに一点台前半という驚異的な数字でトップを争っている。
 一方の坂本も一時は打率四割の大台をマークするなど、こちらもリーグトップの高打率で首位打者をキープしている。箸もペンも左利きなのに、野球は「右投げ右打ち」の坂本は、球界でも七不思議の一つとまで言われる。

 今やこの二人、リーグを代表するスター選手にのし上がる勢いを見せているが、兵庫県出身で小学生時代の六年間は同じ少年野球チーム「混陽里(こやのさと)タイガース」に所属。幼少の頃からのライバルという因縁がある。
 しかし、身体の大きかった田中が投打でもいつも一歩リード。「それが悔しくて…」という坂本は、その後、中学、高校を通じて「内角打ち」の技術を会得した。
 「体に近い球だから、タイミングとポイントさえ合えば強く振れ、遠くに飛ばせる」(坂本)。内角球には腰の回転にヒジが付いて回る形が理想だ。それができる坂本には、内角打ち名人≠フ称号が似合ってきた。

 日本を代表するプロ野球界のエースと好打者。少年時代からのライバルが、新たな名勝負伝説≠作る日も近いような気がする。


(「損保のなかま」2009年7月1日付より)


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