スポーツに吹く風
スポーツジャーナリスト 泉 准也


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 ■7 それでもファンは球団を愛している?

イラスト

 それにしても「ファンあってのプロ野球」とはよく言われるが、球団の本拠地によってファン気質にも大きな違いがあることを知らされた。

 九月末現在、三位争いに死力をつくしている阪神タイガースは虎キチ≠ニいわれるほど熱狂的なファンが多いことで知られる。
 昨年十月以降、岡田彰布前監督から真弓明信監督にバトンが受け継がれたが、成績はもう一つ。阪神が負ける度に、関西のスポーツ紙は巨大な見出しで「真弓へたくそ」などと書く。当然、球場でもば声が飛び交う。
 「それくらいやらないと、新聞も売れません」とスポーツ紙関係者が言えば、ファンの一人も「関西は勝ってくれれば、持ち上げ方も半端やないでえ。神様や。褒め倒してこき下ろして…。けなすのも愛情やからな。巨人ファンも変わらんやろ」
 阪神がどんなに負け続けても、甲子園球場は虎ファンで埋まるのは、そうしたナニワ気質≠フせいなのか。

 それに比べ北の大地、日本ハムの本拠地・札幌ドームの日ハムファンは紳士的な雰囲気。例えば投手がピンチでボールカウントを悪くすると、自然発生的に湧き起こる励ましの拍手。昔のパ・リーグファンだったら、ひいきチームを愛するあまりば声を飛ばしてもおかしくない。北海道ファンは温かく投手の奮起を促す。そんな応援スタイルはここでしか見られない。
 稲葉選手が殊勲の一打を放てば歓喜の稲葉ジャンプ=I 球場が揺れ、中継のテレビカメラもユサユサと動く異様な光景。
 「この球場のファンは温かい」という稲葉のセリフと涙が印象的だったのもここだ。
 スタイルは違うが、関西も北海道も球団を激しく愛している点では一緒?


(「損保のなかま」2009年10月1日付より)


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