スポーツに吹く風
スポーツジャーナリスト 泉 准也


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 ■9 育成選手枠は球団のご都合主義

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 今年もドラフト会議(10月29日)が開かれ、プロ野球の新人選手の入団先が決まった。つまり球団の支配下登録選手の「70人枠」に登録されることになる。
 しかし球団は同時に、別枠でプロに進みたいという選手に、チャンスを与える育成制度に沿った形で数人の選手を採用する。

 巨人は2005年に制度設定されて以来、これまで28人の育成選手と契約。その内、今年までに5人の選手が支配下登録選手として昇格している。
 今季大活躍した「天秤打法」の松本哲也、オビスポ投手、そして昨年新人王を獲得し、今季もリリーフ・エースとして実績を残した山口鉄也などの選手である。
 契約金などもなく、いずれも年俸の下限が240万円という格安の育成契約でプロの世界に飛び込み、数少ないチャンスを生かして一軍に駆け上った僅かな選手たちだ。
 他の育成選手の励みにもなるし、何よりも一歩下がったスタートラインから這い上がった、彼らの鍛錬と努力に敬意を表したい。

 一軍の出場選手登録枠は28人。その中に育成選手の5人が入っているということは、高額の契約金を支払って入団させた選手を育成選手がどこかで追い抜いたことになる。その事は取りも直さず、ドラフト上位の選手を、球団は満足に育てられなかったということでもある。
 育成選手を格安の条件で獲得するのは、球団のご都合主義だ。28人の一軍枠に挑む機会が平等なら、「70人枠」を超えた育成枠というのは意味がない。背番号3ケタ、契約金なしの低年俸…。
 だがもし、金の卵≠ェ見つかればそれこそ目を細め、感謝しまくるのが球団。その姿勢には矛盾を感じずにはいられない。


(「損保のなかま」2009年12月1日付より)


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