(22)博打でガックリだ |
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エントツ・さらば生麦より
わたしはこのような環境の中で育ちました。 祖父は若い時は「飲む・打つ・買う」と三拍子揃った人だと聞いています。とくに丁半博打、花札博打に入れ込んでいたらしいです。両腕・背中にはビッシリと刺青をしていました。 「ジュン、さわってみろ、冷たいだろう。こんなバカなことするものではない」と言って冷たい腕を弟たちと一緒に触らされました。 「タタッ殺してやる。このガキ」と出刃包丁を振り上げ町内中を追われました。 祖父は若いうちに道楽をした反動なのか、75歳まで朝3時に起きて「あおやぎ貝」を加工して栃木県・宇都宮市場に卸していました。 わたしの近所にはヤクザ(暴力団)もおりました。夏の夜など喧嘩は日常茶飯ごとでした。時には刃物が光ったりする時もありました。同級生や近所のお兄さんもヤクザになり、二十歳前に亡くなった人もおります。 わたしも一歩間違えば、ヤクザの誘惑に負けていたかも知れません。なぜか祖父の背中をみていますと、こども心に「飲む・打つ・買う」の人生は歩んではいけないのだと思うようになりました。 男はだれでも「博打」が好きです。昔の話ですが、わたしの知人で「福島に遊びに行く」と言って出かけました。なんと福島競馬場にいる画像がテレビに偶然に映ってしまいました。それを見ました奥様が、これもなんと、なんと翌日に家財道具をトラックで運びだし実家に帰ってしまいました。 がらんとした部屋の中で知人と二人で唖然としてしました。新婚3カ月の夏の日の出来事でした。「今度、競馬をやったら離婚する」と言われていたらしいです。 知人はその後再婚しました。今度は競馬公認の奥様でした。しばらくすると電話で「通帳からお金が消えている。泥棒に入られた」と言ってきました。これもなんのことはない犯人は奥様でした。 男も女も「博打」が好きなのです。この男はダメだと思ったら見切りをつけるのも「博打」です。通帳から引き出し、泥棒が入ったことを装うのも「博打」です。もちろん博打にはイカサマがつきものです。 「丁方が足りません。さぁ、ハッタ、ハッタ。丁半同列と見ます」 わたしは賭け事でマージャンはどうしても覚えられませんでした。最大の原因はタバコにあります。永い時間タバコの煙に耐えられない質(たち)なのです。それに頭が悪くルールを覚えられませんでした。 若い頃の博打は人間を成長させます。真剣勝負は将来必ず役に立ちます。もう少し博打を本格的にやっていれば、わたしは大物になったのではないでしょうか。 祖父の言うことを真面目に聞くのではなかったと悔やんでいます。 「丁方が足りません。さぁ、ハッタ、ハッタ。丁半同列と見ます」 小澤勲先生もこんな啖呵を切っていました。 |
(2007年6月15日) |