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先日、新国立劇場に久しぶりにお芝居を見に行きました。前進座公演「お登勢」です。「お登勢」は船山馨・原作。ジェームス三木脚本・演出で数年前テレビ放映され好評でございました。 当日は満席の状態で、ほとんどの観客は中高年の女性でした。お芝居が始まり、第一幕三場、お登勢の初恋の人、稲田家家臣・津田貢との「舞中島」場面。そしてラブーシーンへと発展して行くこのお芝居の見どころです。 なんと、なんと「グーウ、ガーォ」と付近の席からいびきが聞こえてきました。そのすさまじいこと、静まりかえった観客席の約4分の一響きわたりました。 舞台では「好きといわれても…お登勢と貢さんとは身分が違います。あぁー、あぁー、貢さん。やめてください…好きです…好きです…あぁー」そして第一幕の幕が静かに下りていきます。 「グーウ、ガーォ」はつづいています。 幕間で場内が明るくなりましたので「グーウ、ガーォ」を確認いたしました。中高年の女性でした。女房が言うには、お芝居の始まる前に「物」を食べるから眠くなるそうです。 この女性を観察しておりましたら、また何か食べ始めました。あぁ。第二幕も「グーウ、ガーォ」に悩まされるのかと思うと憂鬱になってきました。 「お登勢」は明治維新前後の単なる「恋物語」ではありません。維新の表舞台・裏舞台で活躍した「武士」といわれる人たちが、女中奉公のお登勢の優しさ、たくましさ。そんなお登勢の生きる姿に魅了され、最後は「働くこと」、「土」に生きることの大切さをお登勢から教えられるのです。 「働く」ことは人間の原点でございます。先日もこんなメールをいただきました。 =お早うございます『働け・働け』の文章読みました。「忙しくて困ったと言ってはいけないよ。昔、与作さんが忙しくて困ったと言ったら、神様がそんなに困るなら暇にしてあげよう。暇ほど困ることはないのだよ」と、こんな昔話を若いころに姑から聞かされました。 世の中不景気といわれていますが、子供を育てながら忙しく働いたころは、忙中暇有りで忙しさを縫って遊びました。働く中の楽しさは最高です。町田・お登勢より= 働く「お登勢」は日本中のあちこちにいるのです。「グーウ、ガーォ」の女性も若かりし頃の「お登勢」ではないでしょうか。 第二幕は「グーウ、ガーォ」は聞こえませんでした。 このお芝居「浄瑠璃」の絡めと三味線の音色が素晴らしい。その一節を紹介します。 浄瑠璃 『お登勢』 ジェームス三木・作詞 √ぺペン ぺペン ぺペン ペン ペン ペン √かなわぬ恋と 知りつつも 夜毎に濡れる 箱枕 娘十六 武家奉公 お登勢悲しい 片思い √恋のともしび 先立てて 難儀の海を ふたり連れ お登勢負けるな くじけるな 遠く夜空に 星ひとつ 浄瑠璃 『いびき』 臼井淳一・作詞 √ぺペン ぺペン ぺペン ペン ペン ペン √女房のいびき 歯ぎしりも 夜毎に聞き慣れ 慣れ枕 わたしゃ悲しい 粗大ごみ がまん がまんで 生きてゆく √ぺペン ぺペン ぺペン ペン ペン ペン |
(2004年11月2日) |
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