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[5]物語・物忘れ忠臣蔵の分析

「忠臣蔵」で有名な、赤穂藩のバカ殿様・浅野内匠頭匠が殿中で「この遺恨、思い知れ」と吉良上野介に斬りかかる過程を物語風に分析してみたいと思います。

 なぜ「バカ殿様」なのか。それは赤穂5万石と投げすて、藩士が流浪の身になることを冷静に考えず、いくら吉良上野介に「遺恨」があろうとも、殿中で殺傷事件を藩主自らが起こすことは、当時の幕府政策「大名取り潰し策」の思う壺なのです。
 
 それではなぜ、浅野内匠頭匠が吉良上野介に殺傷事件を起こすほどの「遺恨」を持ったのか、経過はいろいろありますが、「決定的事件」は、吉良上野介の単純な「物忘れ」が原因だったのです。

 その「決定的物忘れ事件」とは。
 公の場所で浅野内匠頭匠が、あまりにも「儀式に反する」席に座っているので、上野介の苛立ちが極限に達して「カァッー」ときてしまい、思わず指をさし「おい…そこ…」と「浅野内匠頭匠」の名前を「忘れて」言ってしまったのです。

「おい…そこ…」と言われた浅野内匠頭匠は、それまでの「誤解」からくる怒りと重なりで、さらに「公衆の面前で恥じをかかした」と思い込み、完全に「プッツン」してしまい、その後、殿中で殺傷事件を起こしてしまうのです。いわゆる物忘れ忠臣蔵の「分析」のはじまり、はじまりです。(パチパチ小さな拍手)。

 吉良上野介62歳。浅野内匠頭匠32歳。の事件でした。

 吉良上野介の役職とお役目は、幕府が行ういろいろな朝廷への「儀式」、その他を「担当大名」に「指導・援助」する役目を幕府から任されていました。少しちがいますが現在の宮内庁長官のような役職も兼ねていました。

 禄高は4千2百石と低いですが、徳川家康が作った「高家」といわれる名誉職で官位が高かったのです。それに加え今でいう「超一流文化人」でした。

 上野介は、朝廷(京都)への旅なども多く、「体力」そして「忍耐」「神経」を必要とする精神労働者&肉体労働者でもありました。
 本来ならば50歳代で隠居生活を願い出たいのですが、これもいろいろ事情がありまして上手くいきませんでした。上野介自身もこのころ病気がちで、この一連の「儀式」を迎える直前まで寝込んでおりました。

 それではなぜ「物忘れ忠臣蔵」が起こったのでしょうか。さらに「分析」してみます。

 わたしも最近、物忘れが激しくなりました。以前からとても「激しい」と言う人もいます。
 チームの名前など喉まで出掛かっているのに出てこないことが度々あります。また「顔」は分かるのですが、その人の名前を思い出せないこともあります。
「臼井さん」と声をかけられ、どうしても思い出せない「人」なのです。が、恥ずかしいので「とぼけて」話を聞いています。

 それにもう一つ、最近は「いらいら、苛立ち」が以前に比べて多くなりました。いわゆる「人の話」を聞かなくなりました。女房から怒られています。

 吉良上野介が思うには「せっかくお役目を推挙したのに、32歳の田舎大名が、なぜ自分の意見を素直に聞かないのか。それに前にも同じお役目をやっているではないか」と、浅野内匠頭匠の顔を見ていると、苛立ちが次第に増してきたのだと思います。その結果が「おい…そこ…」へと行きつき、さらに殺傷事件になってしまうのです。

 62歳という年齢はこの時代では高齢です。現在とは比較ができません。と、同時に吉良上野介にもう少し若さと体力があったならば、バカ殿様への対応も柔軟にしていたのではないかと思われます。

「忠臣蔵」は、わがままな「バカ殿様」と、上野介の「物忘れ」から起きてしまいました。これによりどれだけの多くの領民が迷惑を被ったのか、歴史の焦点はそこには行きませんでした。

 大石内蔵助は「討ち入り」と称して、夜中に吉良邸を襲い、裸同然の人たちを「殺した」もっとも卑怯な「敵討ち」なのです。幕府は吉良邸を町中に移し「どうぞ敵討ちをおやりなさい」という状況だったのです。
 「天晴れ!アッパレ!四十七士!」だけに脚光が浴び。何故か上野介には「ワイロ、欲ばりの吉良」の烙印が押されてしまう。史実と違う結果になってしまいました。


 重要な「ポスト」で働くということは、どこの世界でも「体力と柔軟な脳細胞」を必要とされます。これは老いとともに衰えていくことを自覚する必要があります。当時、超一流文化人と呼ばれていた吉良上野介ですら「よる年波」には柔軟な脳細胞が働かなかったのです。

 何時の世でも「権力者」は「面目」を保ちます。犠牲になるのは「中間管理職」です。「末端な勤め人」はもっと悲惨な目にあっているのは現代でも変わりありません。


 同郷の小泉首相は私より1つ年上です。最近の「物忘れ」は私より進んでいると思われます。脳細胞は柔軟でしょうか?

 物語・物忘れ忠臣蔵の分析はこれで終わります。あとはどうぞ勝手に推理・分析してください。(参考文献『上野介の忠臣蔵』清水義範著・文藝春秋)

(2004年11月30日)


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