思うがまま…

臼井淳一
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(26)軟式野球「ボール先行コール」を検証する

 日本アマチュア野球規則委員会は2月12日、東京都内で総会を開き、軟式野球もボール、ストライクの順とすることを確認しました。
 何時から実施するかはこの原稿を書いている時点(2/24)でははっきりしません。

 プロ野球、高校野球、社会人野球(少年野球硬式・一部軟式)はボール先行のコールは問題ありません。なぜかと言いますとほとんどのグランドにカウントボードがあるからです。(甲子園を除きS・B・Oですが)

 問題はわれわれ軟式野球を行うグランドの90パーセントはカウントボードがないグランドで試合をするのです。また、囲いのないグランドがほとんどです。カウントを確認するには審判員の「声」と「ゼスチャー」だけなのです。

 軟式野球の試合数は、プロ野球を含め「公認グランド」で行う硬式野球の試合数に比べて、数字では表せないほど多いです。
 軟式野球が「野球の底辺を支えている」と言っても過言ではありません。

 これらの劣悪なグランドで永年にわたって審判員が大きな声で手を振り上げてで「ワンストライク・ツウボール」とやってきたのです。
 これを「ツウボール・ワンストライク」に変えることにどれほどのメリットがあるのでしょうか。

 野球というスポーツは複雑で、審判の目線と選手の目線、さらに観客の目線とそれぞれ違う場合が多くあります。だから楽しいスポーツなのです。

 カウントだけをとってみても攻撃方法、守備方法も変わってきます。
 攻撃側も守備側も大声で「ワン・ツウだぞー。バッティングチャンスだ」「ツウ・ワンだぞー。追い込んだぞー」と声をかけ合いながら永年やってきたのです。

 一口に言いまして、ストライク先行のコールは、日本の野球文化の中に深く浸透してしまっているのです。

 アメリカのボール先行は「攻撃野球」、日本のストライク先行は「守りの野球」、だからボール先行が良い。などと言う人がいます。これも可笑しな理屈です。元々野球はバットで打つ攻守が明確なスポーツなのです。

 実際にプレーをしていまして一番気になるのは「ストライク」です。なにしろ「3ストライク」で終わりだからです。「ストライク2」は後がないのです。

 球審から「0ストラスク・3ボール」と言われたら日本人は心に余裕ができるのです。アメリカ人では打たないと「ヤバイ」と思うそうです。もっとも最近はメジャーリーグ等でも「3ボール・0ストライク」でも甘い球も打ちません。

 アメリカも日本もボールよりストライクが大切なのです。大切なことを先に言ってもらうのは当たり前のことではないでしょうか。

 特にカウントボートがない軟式野球の選手は、ボールカウントの確認は球審の「声」と「ゼスチャー」しかないのです。

 「ボール先行のコールは慣れればなんともない。もう5年前からやっている」「国際試合では必要なのだ」とおっしゃる軟式審判員がいます。

 けれどもチームや選手はどれだけ「理解」しているのでしょうか。「迷惑」だと思っているかも知れません。特に軟式野球は「国際試合」など数少ないのです。

 実際に球審が「2ボール・1ストライク」と言っても、捕手は「ワン・ツウ」と投手に声をかけ、「1ボール・2ストライク」と言っても守備側、攻撃側とも「ツウ・ワンだ」とひっくり返しているのです。

 それでは日本は何時ごろからストライク先行になったのか、実は明確な答えはないようです。アメリカとの交流試合は1世紀前から行われていたのです。何故に変更しなかったのでしょうか。これも不思議です。

 今になって疑問に思うのですが、ストライクが先か、ボールが先かは野球の根幹にかかわる問題ではなかったのでしょうか。

 日本野球の歴史を振り返りますと、アメリカでのルールの確立が明確になっていない時代から積極的に日本は行いました。そしてアメリカがルール変更しますとそれを直ぐに見習ってきました。

 野球はアメリカの国技といいます。日本では国技が相撲ですが「土俵」のない学校は多いです。完全に野球専用グランドが「土俵」より多くなりました。

 日米の野球人口を比べますと、軟式野球を含めますとプレーをする野球人口はアメリカを抜いていると思います(人口比例を考慮)。そういう意味では野球は日本の「準国技」と言えると思います。

 「ストライクが先か、ボールが先か」、大胆に推測しますとアメリカも日本も「ストライクが先か、ボールが先か」はどうでもよかったかもしれません。

 また、野球用語はすべて翻訳されていますが「ストライクとボール」は原語のままなのです。翻訳するには難しかったかもしれません。

 野球のルールはアメリカから教わりましたが、「ストライクが先か、ボールが先か」は教えなかったかもしれません。
あるいは「ストライクが先」と教えてしまい、あとで間違いに気づいたのですが、これはルールではないので変更の「指導」をしなかったかも知れません。

 また、「ストライク」が先は日本国民の感性に合っていたのではないでしょうか。それにアメリカとの親善試合ではカウントボードがあるグランドですので「S・B・O」でもアメリカはチームも理解したのではないでしょうか。

 野球が日米以外の国にも広がり、アメリカ式のカウントが指導されました。それにより日本は「置いておかれた」状態になってしまったのです。

 現実問題として「軟式野球連盟」からの通達でボール先行が実施されれば、区・市・町・村大会はすべて統一されていきます。通達はどの時期にどのように方法で行われるかはわかりません。

 「軟式野球大会」がストライク先行で統一されれば、不本意でありますが、われわれもそれに従うほかありません。

 なぜならばチームによっては軟連の大会、その他、私設リーグ、ネット大会といろいろな大会にエントリーしているのです。同じ軟式野球でコールが違っては選手が混乱をいたします。

 軟式野球審判員にはお年を召した方もおられます。
 「いまさら、どんなメリットがあって変えるのだ」と疑問を持つのは当たり前です。

 ここで面白い話を一つ。アメリカの審判員が草野球の審判をやったとします。「ワン・ツウ」とコールをします。略してコールすることはアメリカの野球でも時々あるそうです。
 日本の選手はあわてて
 「アメリカの審判員だからツウ・ワンだ。誤魔化されるなよ」

 これを聞いた日本語の理解できるアメリカ審判員は
 「審判員を侮辱している。私はアメリカに帰ります」
 なーんていうことになりかねません。

 実際に国際大会やWBCなどで、審判団から「日本選手はマナーが悪い」と批判されるのも「ボール先行コール」などを変更しないでやってきたことにも原因があると思います。

 日本アマチュア野球規則委員会は「ボール、ストライク」の変更を一方的に押し付けるのではなく、歴史的経緯なども知らせる必要があるのではないかと思います。

 ボール先行コールの実施により、軟式野球界・草野球界において混乱を招くことは必至だと思います。

(注・この文章は、思うがまま…書きましたので「会」の公式な見解ではありません。また野球の歴史的経緯なども違っている個所があります)


(2010年3月1日)


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