思うがまま…II

臼井淳一
「サタデーリーグ」トップページへ 前ページへ


(51)三年寝太郎とフーさんのこと

 定年退職して11年、わたしは年に一回、近県で行われる一泊旅行のOB会には必ず出席しています。1、2年目は先輩OBの方々が多いので小さくしていました。最近は古株になってきました。

 なんといっても楽しいのは、それぞれの方たちの「歳の取り方」です。会社にいたころは尊敬に値する人が、辞められるとつまらない人になっています。また、会社にいたころ目立たない人が、生き生きとして地域でいろいろなことをやっています。

 まぁ。そんな「人生模様」が見たくて毎年参加しています。

 残念なのはいつも一緒に参加していた友人のフーさんが脳梗塞で倒れ1年半以上も意識がなく、楽しい会話ができなくなったことです。

 先日も病院にお見舞いに行った時に言ってやりました。

「いつまでとぼけて寝ていないで何とか言えよ」

「……好きで寝ているわけがないのだ。あと1年半寝かしてくれよ。へへへえ。
 三年寝太郎の話を知らないね。今にびっくりするようなことをやるよ」。

 フーさんが三年寝太郎になってしまったのでしょうか。あと一年半待ってみよう。きっと元気になると思います。



   

   

 そうそう東京オリンピックで思い出しました。このころフーさんと一緒に共同生活をしていました。新小金井という田舎の駅前商店街に日の丸の旗が電柱に掛っていました。それを酒に酔った勢いですべて抜いていきました。

 そのうち警察官が自転車で追いかけてきましたので、もう必死で逃げました。50年前の若者は幼い悪さをしたものです。もう時効です。

 フーさんとのドライブの思い出は数限りなくあります。運転中にわたしが急に「もよおし」ました。あいにくの雨の中を路上で「大」をしました。フーさんわたしが「大」を終わるまで鼻をつまんで傘をさしてくれました。今、思うとここまで面倒見てくれる人はいません。同時に軽犯罪法で逮捕される恐れもありました。これももう時効でしょう。

「三年寝太郎 頼むから起きてくれよ。またドライブいこうよ」

「あんたとは行きたくないね。野糞は一回や二回ではないよ。いちど畑の中で犬に吠えられてみっともない格好で……。面白かったなぁー」

「そうそう若いころの、後家さんにもてた話を又ききたいなぁー」

「会社の上司に告げ口されてね。上司に呼ばれて『フー君。何回やったの?』。いやー答えようがなかったなぁー」

「その後家さんと最近スーパーで出くわしたら『フーさん。お墓探しているのよ。いいとこない』もうお互いに爺さんとばあさんになったなぁー」

「またオリンピック東京でやるのは知っている?」

「東京ではなく福島でやって欲しいよ。安倍首相は『原発事故の福島はもう安全地帯だ。だから東京も安全だ』と堂々と言ったね。東北の復興のために東京ではなく福島でやるべきだよ。お金の使い方が間違っているよ」

 フーさんは時々鋭いこともいうのです。その通りかもしれませんね。

「友人とは」親しいだけでなく。お互いに信頼して、助け合ってできるものです。三年寝太郎に奇跡が起こることを願うばかりです。


(2014年11月1日)



「サタデーリーグ」トップページへ
前ページへ