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[18]セミ時雨


 少年のころ、水遊びから帰り、夏休みの宿題帳をペラペラと開きました。しばらくすると「睡魔」に襲われて寝ってしまいました。2〜3時間の熟睡したのだろうか。セミの鳴き声が聞こえてきます。夏の夕風が「鼻の頭の汗」の上を通り過ぎて行きました。

 少年のわたしは「時間よ永遠に止まれ。大人になりたくない。セミの鳴き声と夏の夕風は、わたしだけのものだ」と思いました。

 最近、朝起きますとひざとアキレス筋が非常に痛いのです。以前からも気になっていたのですが、ヒップ薬などで誤魔化してきました。まぁ、野球審判の疲れだと思っていました。ところがだんだんとひどくなり、階段を手で支えないと降りられない状態になりました。近所の温泉・マッサージに3度ほど通いました。その場は痛みが取れるのですが、翌日同じ状態に戻ってしまいます。

 そこで近所の「鍼灸医」に通院することにしました。ここでの治療は、膝からアキレス筋にかけて「電流」を通すのです。「電気椅子」ではありません。そのあと全身のマッサージをします。約1時間の治療ですが、週に2回の通院でメキメキ効果が現われました。現在では週に1回になりました。

 先生が言うには「中高年は、身体の手入れをすれば、現状の体力は永く維持できるのです。悪くなってからではおそいのです。臼井さんはギリギリのところでした」と言われました。「野球審判」ができる間は、この先生と「お付き合い」をするつもりです。

 もう一つ先生に薦められたのは「水中歩行」です。以前から女房にも薦められていたのですが、「600メートルも泳ぐ女房の隣で、水中歩行なんかバカ馬鹿しくてできるかー」と一蹴しておりました。わたしも必死に泳げば50メートルぐらいは泳げるのです。今回は先生の薦めということで、室内プールに通うことにいたしました。

 1時間半も水中歩行をしたり、時たま足をバタバタして泳いだりしているうちに、最近ではすっかり「やみつき」になってしまいました。

 それにしても女房は、50メートルを連続して100メートル泳いで「今日は8本泳いだからもういい」なんて言っています。たしか結婚した時には「かなづち」でした。「肩が凝る」とか「頭が痛い」とか言いながら。水泳教室に通い、何時の間に「河童」になったのだろうか。このしたたかさには脅威を感じました。

 プールから帰ってパソコン開きますと、面倒なメールが何通も来ています。「水中歩行」で疲れた脳細胞には耐えきれません。そして「睡魔」に襲われて寝ってしまいました。

 1時間も浅い眠りをしたのだろうか。セミの鳴き声が聞こえてきます。夏の夕風が「鼻の頭の汗」の上を通り過ぎて行きました。

「わたしの人生はなんだったのだろうか。これから楽しいことがあるのだろうか」。セミの鳴き声と夏の夕風は、むなしく、はかなく、聞こえ通り過ぎていくのです。

「お父さん。お布団とりこんで、打ち水してください!」。

 あーぁ。これから創造力・創作力・傑作力が湧いてくるのに…。この一言で挫折するようでは、わたしの才能は、所詮はセミのような「はかない命」なのです。
 セミ時雨でした。


寅「満夫。最近、夢を見たことがあるか」
満夫「最近は仕事が忙しいから夢も見てないよ」
寅「日本の労働者諸君は可愛そうだな。夢も見られないのか」


(2004年8月1日)


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