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[8]オヤジの果てしない会話

 定年退職した友人の「新築祝い」に行ってきました。近くに住む定年退職した友人を呼び、3人で一晩中お酒と水を飲みながら語り明かしました。

 共通した話題は定年後の「生活設計」であります。とくに家でぶらぶらしていると女房殿に「邪魔」にされて苦痛だそうです。

「お父さんは ご飯だけは 食べるのね」と言われた時には。
「あぁ、なんで、こんな女と一緒になったのか」とつくづく思ったそうです。

 さらに追い打ちをかけるように女房殿。
「離婚しようかと考えましたが、いろいろ計算しましたら損なのでやめましたよ」。

 もう絶対に家にはいられない。なんでもいいから働くのだと決心をして、ハローワークに何回も行くのですがなかなか仕事が見つからないそうです。

 ハローワークで「貴方が女性なら仕事がすぐ決まる」と言われた時には。
「そんなバカなー。男だけ差別するのか」と怒鳴ったそうです。

 体が元気で働く意欲が充分あります。また、職種も選びません。それでも60歳をすぎますと働かせてもらえないのです。

 そんな彼が夜の12時をすぎて雨の中、50分もかけて自宅まで徒歩で帰る後姿を見て、とても悲しくなりました。

 わたしと2年しか退職年数が違うだけで、失業保険は5カ月しか出ず、62歳までの1年と7カ月は、厚生年金は10万円前後しかもらえないのです。退職金を食いつぶすしか生きていく方法がありません。

「勝ち組・負け組み」の話題になりました。

「勝ち組は厚生年金をもらわないで生活できる人」ということになりました。これではわれわれ負け組みはあまりにも惨めになってきました。

 そこでいろいろ討論した最終結論は。
「負け組みは、橋の下や路上で生活している人。われわれは勝ち組だーぁ」。

 そしてさらに、さらに討論を深めた結果は。
「女房に追い出されたら橋の下に行くか」でした。

 この結論で三人は元気になりました。
「テント張りは昔山登りの経験があるから任しておけ」
「缶拾いは、こどもの頃叔父さんの仕事を手伝ったから得意だ」
「河原は土地がいっぱいあるから大きな家を建てられるぞ」
「何を食べてもお腹を壊さない得意技があるのだ」
「女房がいないから最高にいい」と、大いに盛り上がりました。

 と言うことは、勝ち組でも負け組みでもどちらでもいいということです。どうせあと生きても10年〜20年です。まごまごしていますと5年ぐらいで死ぬかも知れません。

 友人と二人で布団の中での会話がさらに弾みます。
「明日は雨だ。仕事に行かないでいいと思うと、最高に気分がいい」。

「会社の若いやつが遊びに来て、いいなぁー。仕事にいかなくて、と言うのだ。俺は言ってやったね。あと20年も働けばお前も俺と同じになる。ただ、あと20年、会社が持つかだ」

 さらに追い打ちをかけるように。
「いつでも橋の下に暮らせる覚悟をしておけ、と言ってやったよ」。
 うーん。夢も希望もないことを平気でいうオヤジ。やはりたくましいです。

 夜も更けていきます。60歳台のオヤジ同士の会話が果てしなく続きます。男は幾つになっても「夢と青春」を追い求めます。

 これを読まれている若い皆様方も「定年」は必ず来ます。その時の準備などする必要はありません。この時代、なるようにしかならないのです。

 あえて準備をするならば「友人・知人」をたくさんつくることです。そのことによりこれからの「人生」が思いがけない展開をしていきます。

 人生の勝ち組・負け組みは死ぬまで分からないのです。

 わたしの目標は、こんな夢も希望もない日本にした、同郷の小泉純一郎首相の「悪政」が本当に「悪政」であることを証明させることです。この時わたしは人生の「勝ち組」だと、ほんの少し自己満足するでしょう。

 これを書き終えて、しばらくすると友人から電話が来ました。
「臼井さんから紹介された警備会社に面接に行ったよ。やっぱり条件が合わなかった。ありがとうねー」と。
 うーん。なんとか「力」になってやりたいです。 

(2005年11月1日)



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